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(*゚ー゚)やがてお弁当になる話のようです

245:名無しさん:2023/10/09(月) 21:56:17 ID:7kI4KCvI0

 

高校二年生の時だ。わたしには彼氏がいた。

わたしも彼氏もお互いに初めての交際で、そのせいか、今思い返せばロマンチックな学生だった。

 

何回目かのデートはお弁当を用意して電車でちょっと遠出をして紅葉を見に行った。

見に行ったというほど立派なものではなかったかもしれない。

遠出とはいえ駅二つ先の、街路樹の紅葉並木が見える公園に行っただけだ。

 

それでもときめきしかなかったのだ。何もかもが楽しかったのだ。

動きやすさと可愛さを兼ね備えた服を悩んで選んで、動画を見ながらヘアアレンジの練習をした。

お弁当はわたしが作った。

 

彼がおにぎりが良いと言うので、塩と、梅と、おかかの三種類を小さく二つずつ作った。

お母さんに教わりながら下味から揚げるまで一人で仕上げたからあげ。これは大きめに作った。

卵焼きも初めて作ったけどこれは意外に得意だった。卵を三つ使った分厚くて、みりんでほんのり甘い味付け。

それにレタスとプチトマトを付け合わせて、味変用にマヨネーズをラップに包んじゃったりもした。

 

 

246:名無しさん:2023/10/09(月) 21:57:20 ID:7kI4KCvI0

 

同級生に見られる心配はないと思って手を繋いで歩きながら紅葉が綺麗だねなんて言って。

子供が遊んでいる公園のベンチに二人で並んで座るのはいつもと違ってむず痒かった。

 

そこがときめきのピークだった。

 

ラップに貼ったマスキングテープでおにぎりの違いを説明してからおかずを入れたタッパを開けた。

彼は卵焼きの出来を褒めてくれた。すごいすごい、おれのかあちゃんよりもうまいよ。とかなんとか言って、一番に箸を伸ばした。

 

 

食べて一言が「うえ」だ。

「うえっ、びっくりした、なんで甘いの?」だ。

 

 

(;*゚ー゚)「あ、ごめんね」

 

どうしてわたしはあの時、謝っていたんだろう。

 

.

 

247:名無しさん:2023/10/09(月) 21:58:30 ID:7kI4KCvI0

 

(*゚ー゚)「うちの卵焼きって甘いんだよ」

 

( ´ー`)「マジで? なんでおかずが甘いんだよ」

 

(;*゚ー゚)「なんでって言うか、うちはずっとそうなんだもん」

 

( ´ー`)「なにそれ。普通しょっぱいもんでしょ」

 

(;*゚ー゚)「……普通って」

 

( ´ー`)「だっておかしいじゃん。卵焼きっておかずだよ?」

 

味付けの「普通」なんて家庭によるんだよあのバカヤロウめ。

好みじゃないならそれで良いけど、どうして正義みたいに否定的な言い方をするんだよ。

 

(*゚ー゚)「あ、えっと……しょっぱいって、何で味付けしてるのかな?

     わたし、次はそれ作ってみるから」

 

そんな健気な事を言ってしまえる高校二年生のわたしって、なかなか可愛いと思う。

 

( ´ー`)「そんなの知らねーよ。作った事ないし。おれの母ちゃんに聞いてみれば」

 

 

黙れクソガキ。

 

 

248:名無しさん:2023/10/09(月) 21:59:26 ID:7kI4KCvI0

 

たかが。たった。

 

されど卵焼きの味付け一つで十月の気温よりもがくんと冷め切った私は、驚くべき早さでお弁当を片付けてそのまま駅に走った。

箸は割り箸だったから惜しくはなかった。早くいなくなりたくて、運良く駅には目的の電車が停車中だったから駆け込んだ。

切符も買っていたのにどうして彼に捕まらなかったのかは無我夢中だったから分からない。

そもそも追いかけてこなかったのかもしれない彼氏だった男の子には、電車の中で別れのメールを送った。

学校で若干の粘着をされたが向こうが後輩の女の子に目移りしたお蔭でぱったりと終わった。

 

そんな事があってから、わたしの脳みそはしょっぱい卵焼きが好きな男をマザコン野郎だと思うようになったらしい。

二十七歳現在になるまで、卵焼きの味付けで潰えた恋が二つほどある。

 

.

 

249:名無しさん:2023/10/09(月) 22:00:17 ID:7kI4KCvI0

 

弊社の社員食堂は大変優秀だとの話を聞いてはいたけれど、実際に食べてみるのは入社以来初めてだ。

今まで利用してこなかった理由は基本的にお昼を持参している事と、利用者の大半が男性社員である事が大きい。

仲の良い同僚に誘われてついて行った事が一度だけある。食券を買わずに利用するのはやや気が引けたが、駄目というルールはないらしかった。

 

その時の、仕事のフロアにいる時とはまた違う学生時代を思い出すような男性集団の活気だとか、

少し離れた席で勢い良く啜られた汁でも飛んできそうな麺の音だとか、そこかしこから聞こえてくる食器の音や咀嚼音がどうしても耐えられなかった。

別段わたしが聴覚過敏というわけではない。ただ、苦手な音の部類なのだろう。居酒屋に限らず活気のある飲食店も苦手だ。

 

その自覚があるからこそ避け続けていた社食の食券を片手に受付カウンターに並んでいるのは、ものすごく食べたいメニューがあったからに他ならない。

なんと、麹に漬け込んだ鮭の定食だ。しかも豚汁、漬け物、サラダ付き。写真詐欺でなければ鮭には大根おろしも添えてある。

 

 

250:名無しさん:2023/10/09(月) 22:00:51 ID:7kI4KCvI0

 

魚焼きグリルを洗うのが億劫過ぎて社会人で一人暮らしをしてから魚はフライパンで焼くっきりだ。

実家に戻った時くらいしかパリパリの魚の皮を食べられていない。わたしはパリパリの、バリバリの、魚の皮が好きだ。

それに豚汁だって、具材を沢山入れたい気持ちとそれを用意する手間の天秤に負けて結局味噌汁になってしまう。

 

どうやら社員食堂は定番のメニューの他に三ヶ月程度を目安にした期間限定メニューが設けられているらしかった。

普段社食の話題など気にもしていないのだが、誰かが言った「麹鮭定食、定番になってほしいよな」の言葉がふっと耳に入ってきた。あと少しで変わるらしいよな、とも。

麹鮭定食、の魅力的な響きにのこのこと社食をのぞきに行くと、券売機横の掲示板の一画に手作りなのが一目で分かるラミネート加工されたポップが貼られていた。

期間限定メニューは三種類あった。手書き文字のチープさに反して写真の撮り方がいやにうまかった。

そしてその期間限定が十月いっぱいで終わる事が、あとから貼り足されたポップに謎のにっこり笑顔のイラストと一緒に書かれていた。

 

 

251:名無しさん:2023/10/09(月) 22:01:46 ID:7kI4KCvI0

 

絶対食べたいと思ったのが昨日の事だ。

今、わたしの目の前には写真よりも美味しい色と匂いの定食がある。

 

食器はどれも軽く、プラスチック製の安価なものなのだ。

だというのに、照りのある焼き目の鮭が乗った角皿のビジュアルはぐっと上品さを漂わせる。ビジュアルが大正解過ぎる。皮は見るからにパリパリ。

豚汁はわたしの理想よりは具が細かいけれど、それでも具沢山なのが分かる。大根じゃかいもにんじんは当然として、こんにゃくとれんこん、後乗せの青ネギが良い。

ごはんは白く、流石に炊き立てではないだろうが放置されたような気配は少しもない。見た目には硬めの炊き方で好みだ。量はやや多い。

小鉢の漬け物とサラダは写真通りといった感じだったが、嬉しい事にドレッシング類はカウンターから自由に選ぶ方式だった。

ドレッシングびちゃびちゃのサラダはかなり悲惨だ。

 

和風ドレッシングを垂らしたくらいにしてあとは食べるばかりの定食が乗ったトレイを持ってテーブルを見渡す。

 

 

252:名無しさん:2023/10/09(月) 22:02:32 ID:7kI4KCvI0

 

一テーブルにつき椅子が四脚、それをくっつけた計八人がけテーブルの島が食堂の大半を占め、窓際には一人席といった感じで椅子が並んでいる。

折角なら外の景色を眺めて食べたい気もしたけれど、窓際席はどことなく丸い背中が点々としていて、おじさん専用なのかなという雰囲気があったのでやめておく。

あまりぐずぐずしていても次々に席が埋まってしまうのでさっさと座りたいと思っていると、ちょうど人が離れ、四人がけ分が無人になったテーブルを見付けた。

 

豚汁が零れないように気を付けつつ急いで席を確保する。くっついたテーブル側には人がいたが、端に座ればそこそこの距離が取れた。

持参した除菌シートでテリトリー分を拭くとなんとなく視線を感じる。気にするものか。

さて座り直し、トレイの位置を整えて、新しい除菌シートで改めて手を拭き、合わせる。豚汁からは柔らかな湯気が立っている。

 

(*-ー-)人「いただきます」

 

(,,゚Д゚)「椎名さん。一緒して良いですか?」

 

(*゚ー゚)「……木越さん」

 

.

 

253:名無しさん:2023/10/09(月) 22:03:30 ID:7kI4KCvI0

 

わざわざ真向かいの席から声をかけてきた男を見上げた。

木越さんは同い年だけど二期先輩で、教育係の補佐という立場で新入社員時お世話になった。今では業務に関係ない雑談もする。

短髪でしっかりした体躯だけれど、スタイルが良くて物腰が柔らかく暑苦しさはない。くりっとした目は少年みがある。くしゃっと笑うと涙袋が強調される。

小学生の時にひどく転んで縫ったほどだという目立つ傷が顎にあるのに強面でもない。痛々しいというより、不思議と彼の顔に馴染んでいる。

この、いかにも女受けの良い素敵な男性は、どうやら私と仲良くなりたいようなのだった。

 

間違いなく好意がある事はこれまでの付き合いで確信している。事実、今だってわたしと相席をしにきたのだからとぼける方が恥ずかしい。

その好意がオトモダチ的な事なのか男女交際の方なのかはいまいち図れていない。

話すようになったきっかけがゾンビ映画なせいだ。わたしも彼もそのジャンルが好きな知り合いがいなかった。

あまり盛り上がれない話題だから貴重な仲間意識を持っているだけの可能性もある。

 

個人的には話していて楽しいので良いな、と思っている。部署の打ち上げでしか見た事はないけれど、木越さんは食べ方が綺麗なのでそこも良い。

好きではある。異性として好きかというのはこちらとしても明言しがたい。

 

(*゚ー゚)「どーぞ。知らない人に座られるより安心です」

 

(,,゚Д゚)「あはは。良かった、顔見知りで」

 

(*゚ー゚)「テーブル拭きますか?」

 

(,,゚Д゚)「あ、良いですか。ありがとうございます」

 

.

 

254:名無しさん:2023/10/09(月) 22:04:44 ID:7kI4KCvI0

 

使いさしですけど、と断ってテーブルを拭いたシートを滑らせると「いえいえ、そんな」と曖昧に応えてテーブルを拭く。返答がアラサーだ。

形容しがたいものの、こういう些細なところで気張っていないなというところが好きだなと思う。自然体を知るような仲でもないくせに、彼の自然体を感じている。

わたし達はまだ二十代で、もうアラサーで、まだ若いし、もう若いとは言えない。

 

美味しい魚が食べたくって普段はしない事をするって、もしかしてすごくババ臭いのかもしれない。

でも美味しいもの食べたいのに年齢って関係ないよねとも思う。口に出したら言い訳っぽいから誰に言うつもりもないけど。

 

(,,゚Д゚)「椎名さんは麹鮭にしたんですね」

 

席につきながら木越さんが言う。

 

(*゚ー゚)「木越さんのは、味噌焼き? でしたっけ」

 

縁の反った平皿には汁気の多い味噌だれが絡んだごろごろした鮭ときゃべつやきのこ、たまねぎなんかが乗っている。

香ばしさのある味噌ラーメンみたいな匂いがする。

 

(,,゚Д゚)「要はちゃんちゃん焼きってやつですよ」

 

(*゚ー゚)「あー、なるほど」

 

(,,゚Д゚)「ちゃんちゃん焼きって鉄板でやるから、味噌焼きって名前にしてるのかも」

 

(*゚ー゚)「確かに。イメージ、こんなつゆだくじゃないですね」

 

.

 

255:名無しさん:2023/10/09(月) 22:05:54 ID:7kI4KCvI0

 

(,,゚Д゚)「でもこれね、すごいんですよ。野菜からこんなに水分出てるのに味が全然ぼやけてないんです」

 

(*゚ー゚)「あ、それはすごい」

 

うんちくを声高々に語って聞かせているわけではなくご飯の話を楽しそうにする姿が同い年ながら可愛い。

メイン以外はわたしの定食と同じなのだなとなんとなしにトレイの小鉢を眺めて、ふともう一皿トレイの外にあるのに気付いて、ひゅっと喉が詰まった。

 

卵焼きがあった。小さめの角皿、汁が滴り、大根おろしが乗っているあたりあまりにもだし巻き卵だ。

ああ、嘘でしょ。この人、しょっぱい卵焼き好きなの?

 

思わずじっと見つめていたのを、木越さんに声をかけられて気付いた。見つめるというか、睨んでいたというか。

 

(,,゚Д゚)「食べます? 美味しいですよ」

 

(;*゚ー゚)「え? あ……あー、でもぉ」

 

正直なところ、甘い卵焼きが好きでそれが私の、我が家の普通というだけで、だし巻き卵やおかずとして塩気をきかせた卵焼きが嫌いなわけではない。

嫌いなのはそれを「普通」と馬鹿にした言い方で言い切ってわたしを否定して、そのくせ作り方も知らないマザコン野郎だ。

過去のあいつやあいつやあいつらのせいで馬鹿馬鹿しくもわたしは身構えてしまうのだ。たかが、たった、されど卵焼きの味付けで。

 

 

256:名無しさん:2023/10/09(月) 22:07:14 ID:7kI4KCvI0

 

木越さんが皿を寄せてきただし巻き卵など、大きく蒸し焼いたのを切り分けたものではなく一つ一つ焼いているのがふわりとした形で分かる。

表面に若干ついた焦げ目も絶妙で、鮮やかな黄色との塩梅が食欲をそそる。

弊社の社員食堂、よほどの料理好きが務めているのだろうか。それか社長か誰かがグルメなのか。

 

(;,゚Д゚)「あ……卵嫌いでした?」

 

(;*゚ー゚)「いえ、いえっ。卵は好きです」

 

(,,゚Д゚)「なら、折角ですし。ぼく好きなんですよ。これ切れ目入ってないから、あとからだと……ね」

 

肩を竦めるて木越さんが言う。わたし達は一つの料理をつつき合う間柄ではない。

遠慮していると捉えられているけれどわたしのこれは動揺だ。卵焼きの味付けで彼に対する「好きだな」が消えたらどうしようという。

 

(*゚ー゚)「……じゃ、じゃあ、端っこを少し、良いですか」

 

(,,^Д^)「勿論ですよ。大根おろしも、好みですけど乗せて食べると美味しいですよ」

 

誘惑に負けた女がわたしだ。いやそもそも、あまり待たせるのもどうかしているし。

もしこれで淡い淡い好意がなくなるなら、木越さんのいう折角のだし巻き卵を食べて終わる方が良い。だって美味しそうなのだ。

 

おや。今更だけれど、わたしはしっかり異性として木越さんが好きみたいだな。

 

 

257:名無しさん:2023/10/09(月) 22:08:07 ID:7kI4KCvI0

 

「いただきます」と言ってだし巻き卵の端を箸で切り分ける。

じゅわ、と箸を押し込むとだしが溢れた。お言葉に甘えて大根おろしもちょっといただく。箸で持ち上げるとくたっとした重みでほんの少し形が崩れる。

 

(,,゚Д゚)「皿、持って食べた方が良いかもですね。制服汚れたら大変」

 

(*゚ー゚)「はは、すみません。いろいろお構いいただいて」

 

(,,゚Д゚)「良いんですよ。駄目なら言ってませんから、ぼく」

 

(*゚ー゚)「あー……はは。やさしー。じゃあ、今度こそいただきます」

 

(,,゚Д゚)「どうぞ、どうぞ」

 

喋っていたお蔭か、食べ頃に熱がとれていた。

見た目の通りだしがきいているが、決して濃いばかりではない。ほのかに甘味を感じる。味付けなのか大根おろしの効果だろうか。

ふわっとしているけど半熟ではなく、焼き加減はしっかりと火が通っていて噛み応えも感じる。

噛むごとにだしの味と、大根おろしが混ざって後味がさっぱりしていく。

 

 

258:名無しさん:2023/10/09(月) 22:09:15 ID:7kI4KCvI0

 

付け合わせのもう一品としてちょうど良い味だし、ごはんのおかずにもちゃんとなる。

大根おろしはあって然るべきだ。だしの塩味とうまみがしっかりしているので、もっとあっても良いと思った。

どうですか、と木越さんが訊くので頷きながら皿を返す。

 

(*゚ー゚)「かなり美味しいです」

 

(,,゚Д゚)「良かった。椎名さんってしっかり味わってますって食べ方するから嬉しいです」

 

(*゚ー゚)「木越さん、ちょっと訊いて良いですか」

 

(,,゚Д゚)「はい、なんですか」

 

(*゚ー゚)「卵焼きって、甘いのとしょっぱいのどっち派ですか」

 

 

彼からすれば脈略もない質問にぱちぱち、ぱち、ときっかり三回瞬きをして、まんまるな目をして木越さんはわたしを見つめる。

ええと、と小さく言い淀んで、返事はすぐにきた。

 

 

259:名無しさん:2023/10/09(月) 22:10:13 ID:7kI4KCvI0

 

(,,゚Д゚)「どっちかっていうと甘いのが好きですね」

 

(*゚ー゚)「やっぱり家の味なんですか」

 

(,,゚Д゚)「いいえ。それがね、母親は甘くないのが好きなんです。具とか混ぜておかずにしたい人」

 

(,,゚Д゚)「でも……ほら、小学生の時って友達と弁当のおかず交換とかするじゃないですか。

    それでよその卵焼きを初めて食べたんですよ。そうしたら甘くて、それがもうめちゃくちゃうまいって思っちゃって」

 

(*゚ー゚)「それ以来、甘い派って事ですか? わー、お母さん、どんなリアクションになるんですか、それ」

 

(,,゚Д゚)「不満そうでしたよ。でも頼むといつも作ってくれて……

    当時の親の年齢に近付いてくると、面倒だったろうなあ、愛されてたなあって思っちゃいますね」

 

(*゚ー゚)「ははは。確かに、それは愛されエピソードですね。もう一つ、良いですか」

 

(,,゚Д゚)「ええ、どうぞ」

 

(*゚ー゚)「お母さんの甘くない卵焼きって、どんな味付けでした?」

 

(,,゚Д゚)「あー……その時によって違ったみたいですね。混ぜたひき肉がそのまま味付けだったり。醤油、めんつゆかな?

    あとは白だしとか、鶏がらスープの素とかだったかなって思います」

 

.

 

260:名無しさん:2023/10/09(月) 22:11:59 ID:7kI4KCvI0

 

(,,゚Д゚)「そうそう、卵はみりんで甘くして、油の代わりにバターを使って卵焼き作った事あるんですよ」

 

(*^ー^)「ええ~? なんかそれ、バター使っちゃうと卵焼きっていうよりオムレツっぽさありますけど」

 

(,,^Д^)「あっ。やっぱり椎名さんもそう思いますよね。おれもそれ出された時はもう笑っちゃって」

 

あ、「おれ」だって。いつもは「ぼく」なのに。

どうしよう。食べたくて仕方なかった麹鮭定食を放置してずっと話してるのに、もっと話していたくなってしまっている。

見向きもしていないけれど、焼き鮭の皮がふちゃけてしまっているのがはっきり分かる。

 

それにしても、わたしってあまりにもチョロ過ぎないか。

良いな、が好きだな、に変わったかと思ったら、卵焼きの味付け一つですごく好きだなに変わってしまっているのだけど。

 

 

 

 

(*゚ー゚)やがてお弁当になる話のようです

おしまい

​◆支援絵

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