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ノパ⊿゚)愛玩用のようです

 【注意】カニバリズム・猟奇的な描写を含む作品です。 

210:名無しさん:2023/10/09(月) 17:33:38 ID:yBN7QIIs0

 

ノパ⊿゚)愛玩用のようです

 

 

『 モドキとは、自らを「人間」や「地球人」と主張する宇宙外来生物を、品種改良した生き物である。

 大部分のモドキは牧場で放牧され、 “おいしいお肉”へと愛情たっぷりに育てられる。

 モドキはこの星の先住民と違って羽毛、毛皮、鱗などに覆われておらず、非常に脆い。しかし人語を解して喋る知能があるので、愛玩用として飼育する種族もいる。

 愛玩用モドキには、誤って狩られないための、生体癒着型首輪の装着が義務付けられている。』

 

 

ノパo゚) スゥ……

 

ノパ⊿゚)「朝だぞぉおおおお!!!!!」

 

 アタシは素直ヒート!

 素直ヒートの肉は体温が高くて、雑菌が繁殖しにくいから生で食べれるの!

 アタシは活発な素直ヒート達の中で特にやんちゃだから、お肉がつきづらいんだって!

 

-=三 ヽノハ*゚⊿゚)ノ ワーイ! タッノシー!

 

/◎ ) =| )「まるで犬だな」

 

 牧場から工場へ運んでくれる機械族のおじさんがそう言って、ひたすら走り回るアタシを買ってくれたの!

 だから忙しいおじさんに代わって、おじさんの息子さんと暮らしてるんだ!

 

ノパ⊿゚)「あ!さ!ごはぁあああん!!!!!のじっかんだぞぉおおおお!!!!!」

 

/▽▽「やかましい」

 

 おじさんの息子は、本当は犬を飼いたくていっぱい勉強してたみたい!

 

/▽▽「……犬じゃない」

 

 初めて会った時のあの心底ガッカリした声は、聞いたこっちが申し訳なくなったぞ!

 

ノパ⊿゚)「ぼっちゃん!あっさごはん!あっさごはん!」

 

/▽▽「やめろ」

 

 見た目はゴツゴツで99.99%無機物のロボットだけど、アタシより年下なんだ!来年中等部みたい!

 

ノパ⊿゚)「じゃあ電ちゃん!!!!!」

 

/▽▽「黙れ」

 

ノパぺ)  ハプッ

 

 

211:名無しさん:2023/10/09(月) 17:34:02 ID:yBN7QIIs0

 

 文句は言ってるけど、ちゃんとアタシのお世話をしてくれるんだ!

 

/▽▽σ ピピピッ

 

 10桁ほどの暗証番号で電子ロックキーを解除して、戸棚からアタシ用の食べ物と飲料水を取り出してくれる。銀紙に包まれた栄養補給固形食と250ccの瓶に入った栄養補給水が、ゴトンと硬い音を立ててアタシの前に出される。

 

ノパ⊿゚) クルルル……

 

 おなかが空いてるけど、アタシはこの家の狗だから勝手に手を出してはいけないんだ!

 ぼっちゃんはロボット用エネルギー補給剤を持って、アタシを見る。

 

/▽▽「まだだ」

 

 ぼっちゃんはそう言って、テレビをつけてくれる。ぼっちゃんはあまりテレビを好まないが、エネルギーを補給する間アタシが退屈しないようにつけてくれてるのだ!。ちょうどモドキを取り扱った料理店のCMを流しているみたいだ。

 

【 TV 】<さくさくジューシー!美味しさがジュワッとしみでるブーンの唐揚げ!

 

【 TV 】<やらない夫♪ やる夫♪ ふぐりまで美味しい~♪ お肉はイトーイ増井~♪

 

【 TV 】<ハンバーグはツンデレ100%のお月見バーガー復刻販売!素直クールの指フライもセットでこの値段!

 

ノパ⊿゚) グルルル……

 

 あっホカホカ湯気を立てる肉料理に、余計お腹が空いてきた気がする。口の中にどんどん溜まる唾液を、溢さないように気をつける。ああ齧った途端に口の中を火傷しちゃうけど、熱々の唐揚げ食べてみたいなぁ!!目玉焼きを挟んだハンバーガーも、黄身がドロッと出るけどパンがフッカフカで美味しいんだろうな!骨まで食べれる指フライも食べてみたいぞ!!

 

/▽▽「よし」

 

 エネルギーの補給を終えたぼっちゃんが、短い合図を出す。

 

ノパ⊿゚)「いただきます!」

 

 銀紙を勢い良く破くと橙色のブロックが出てくる。長方形の硬いクッキーみたいなおやつの見た目をしてるけど、ちゃんとしたモドキのための食事なのだ!

 

ノハ*゚⊿゚)(フルーツミックス味かな?オレンジ味かな?)

 

 硬いが齧れないわけではない、ガリッと一口頬張れば牧場で食べたことのある味が広がる。

 

ノハ*゚~゚)(これはなんだ?えーっとえっと橙色のマで始まってすごく甘くて……)

 

 

212:名無しさん:2023/10/09(月) 17:34:28 ID:yBN7QIIs0

 

ノハ*゚⊿゚)「マンゴスチン味!」

 

/▽▽「マンゴー味」

 

 ぼっちゃんが、銀色の包装紙を読んで教えてくれた。この前は甘酸っぱい苺味で、その前はパイナップル味、もっと前はカレー味を食べた気がするぞ!

 

/▽▽「無果汁」

 

ノハ*゚⊿゚)「へぇー!果汁使ってないのにマンゴーだなんてすっごいな!!」

 

/▽▽「そうか」

 

 瓶に口をつけ栄養補給水を流し込む。栄養補給固形食はいろんな味があるが、この水はずーっと同じ味だ!必要な栄養は揃ってるらしいけど、牧場の野菜スープをまた飲みたいな!

 とっくにCMの終わった液晶画面では、狼の群れが立派な角の鹿を押し倒し食らいついている。ぼっちゃんのカメラアイが凝視しているのは暴力的で美しい捕食者か、たおやかさと俊敏さを兼ね備えた被捕食者か。

 

/▽▽ ガチャガチャ

 

 日課の外出の準備を、野良モドキが襲ってきた時に反撃するための武器をチェックしている。

 

ノパ⊿゚)n ポリポリ

 

 首と一体化している首輪に触れてみる、アタシがお肉にされないための目印。やばっ!意識したらなんか痒くなってきた!

 

/▽▽「動くな」

 

 ぼっちゃんがいつの間にか背後にいて、アタシの長い真っ赤な髪に千切らないようにそおっと触れる。素直ヒートの特徴の、燃え盛る炎のように真っ赤な髪。栄養補給食のおかげで、髪はしっとりと艶やかだ。

 

/▽▽っノパ⊿゚)

 

 外に出るときは(外せないが)首輪とハーネスをつける他に、ぼっちゃんはアタシの髪を梳かして一本にまとめて結んでくれる。

 

/▽▽「鬱陶しい」

 

 以前ぼっちゃんはそんなことを言ってたけれど、アタシの髪を毟ったり剃ろうとしない。口数は極端に少ないけど、案外面倒見がいい子なんだぞ!

 

ノハ^⊿^) フフッ

 

/▽▽「行くぞ」

 

 

213:名無しさん:2023/10/09(月) 17:34:50 ID:yBN7QIIs0

 

 

    ガシャガシャ /▽▽

  スタスタ ノパ⊿゚)

 

 ぼっちゃんは日課の散歩として、アタシを外に連れ出してくれるぞ!

 なんかとにかくでっかい公園には、屋台とか肉屋とかコンビニとかとにかく食べ物を売ってる店が多いぞ!

 

 金網や電磁波で区切られた愛玩用モドキを遊ばせる広場で、ハーネスを外してくれる。あとはアタシが疲れるまで、ひたすらぼっちゃんとキャッチボールをしたり、ぼっちゃんがぶん投げたフリスビーをキャッチしたりするぞ!

 

ソレデネー 从*'ー'从 川д*川 ソウナンダー

 

    _,,..,,,,_

   / ,' 3  `ヽーっ

   l   ⊃ ⌒_つ

   `'ー---‐'''''"

 

 他の愛玩用モドキはモドキ同士でじゃれついたり、人口芝生に寝転がって日光を浴びたりしている。アタシはとりあえず体を動かしまくるかな!

 

 飲食可能スペースでは真っ黒い被毛に白い毛が数本見える猫族のじいさんが、モドキに餌を与えている。なんか拳大の銀紙に包まれている球体だけど、モドキが銀紙を剥ぐと真っ黒い塊が出てきた!

 

( ФωФ)「今日は昆布と梅のおにぎりだ」

 

lw´‐ _‐ノv「ノリ巻きたてのパリッとした食感も良いが、しばらく経ったしっとり感も良きかな」

 

( ФωФ)「ほれ、この魔法瓶には大根と油揚げの味噌汁も入っているぞ」

 

lw´‐ _‐ノv「かたじけない」

 

 黒猫じいさんはどこか屋台で買ったでっかいホカホカの肉まんを食べている。離れているはずなのに、美味しそうな匂いがここまで漂ってきてる!

 

( ФωФ)「あそこの肉まんはな、皮がふかふかもちもちで具材もゴロゴロたくさん入っていて、噛むと肉汁がじゅわーと出てくるのだ。米粉から作った肉まんだから、お主と同じ素直シュールの肉がよく馴染むぞ」

 

lw´‐ _‐ノv「米」

 

ノハ* ⊿ )

 

/▽▽「よだれ」

 

ノハ;゚⊿゚) ハウッ

 

 ここで間違っても黒猫じいさんに突撃して肉まんを奪ってはいけない!よくて私の頭部に埋め込まれた爆弾が爆破するだけで、悪ければ爆破される以外にぼっちゃんが偉い人に無茶苦茶に怒られるからな!

 

 

214:名無しさん:2023/10/09(月) 17:35:29 ID:yBN7QIIs0

 

/▽▽「……………………」

 

ノハ;゚⊿゚) ゴキュルルルルル……

 

/▽▽「家に帰れば栄養補給固形食がある」

 

ノハ’⊿`)「…………はい」ゴキュルルルルル……

 

 ぼっちゃんは食べれないものは出さないし、アタシは出されたものはちゃんと食べるけど、たまには他のを食べたいぞ……。ハーネスをつけられ、重い足取りで帰路につくぞ!

 

ノハ’⊿`) シオシオヒート

 

/▽▽「……………………」

 

 ぼっちゃんがいつもと違う道を歩く、寄り道かな?

 

ミ*^∀^彡「いらっしゃいませー!」

 

 「モドキ用あります☆」と手書きの可愛らしい看板が立てられた、ホットサンド屋で長毛種猫娘がとびきりの笑顔で出迎えてくれる。

 

ミ*゚∀゚彡「店内で召し上がりますか?お持ち帰りにしますか?」

 

 これは白昼夢?ぼっちゃんが他種族の経営している店に入ろうとしてるなんて!しかも愛玩用モドキ同伴で!!

 

ノハ;゚⊿゚)

 

/▽▽「……………………」

 

ミ*゚∀゚彡「機械族の方用メニューもあります!」

 

/▽▽「……………………て、店内でお願いします……」

 

 喋った!ぼっちゃんが文章を喋った!!

 

ノパ⊿゚)(口がきけないわけじゃないけど、ぼっちゃんあんま長文喋んないよな)

 

 可愛いフワフワのお嬢さんに、日当たりのいい窓際の席に案内される。席に着くと、なんかすごい技術で、空中にメニュー画面が立体映像として浮かんでくる。かがくのちからってすげー!

 

/▽▽「選べ」

 

 ホカホカのおしぼりで手を拭いてると、一言それだけを言われる。

 

 

215:名無しさん:2023/10/09(月) 17:36:09 ID:yBN7QIIs0

 

ノパ⊿゚)「へ?」

 

/▽▽「……好きなのを選んでいい」

 

ノハ*゚⊿゚)「本当ですか!? ありがとうございます!!」

 

ノハ*゚⊿゚)「じゃあこのホットサンドと、野菜たっぷりカレースープ、苺のケーキのセットで!!」

 

ノハ*^⊿^)「ぼっちゃんはなに食べるんですか?」

 

/▽▽σ「ロボット用エネルギー補給剤」タブレットポチポチ

 

ノハ*゚⊿゚)「ぼっちゃん味覚センサーあるんでしょ?せっかくだから味があるヤツにしましょ!」

 

/▽▽「うるさい」

 

ノハ ゚n゚) ムグッ

 

 注文用タブレットを操作して、しばらくしないうちに料理が運ばれてくる。

 アタシはぼっちゃんがエネルギーを補給を終わるまで、温かい料理に手を出さず凝視して「待て」に入る。

 

/▽▽「甘っ」

 

 チラッと見えた注文用タブレットには、「はちみつ入りミルクセーキ味エネルギー補給剤」が注文されてた気がするぞ!

 

/▽▽「よし」

 

ノハ*゚⊿゚)「いっただきまーす!!!」

 

 ホットサンドを掴んで持ち上げれば、指にじんわりと暖かさが伝わり、バターの匂いも漂ってくる。齧り付くとサクッと軽快な音を立てて、トロトロの黄身とチーズが口腔内に広がってくる。溶けたチーズと半熟の目玉焼きの他に、ロースハムやスライスした玉ねぎも入っている!牧場で食べたことのある味が、口の中に溢れてくるぞ!!

 

ノハ*゚⊿;) グスッ

 

 カレースープはスープだからとてもサラサラしている。薄切りされた人参、玉ねぎの他にしめじやマッシュルームも入っている。噛んで飲み込めばピリリとスパイシーな味が、おなかに落ちてホッとする。

 

ノハ*;~;) シャクシャク

 

 苺のケーキのなんて甘美なんだろう!真っ白い生クリームと柔らかいスポンジに甘酸っぱい苺のハーモニー!牧場ではみんな同じ誕生日だけど、1年に1回に苺のケーキを食べたことを思い出すなぁ!

 

ノハ*;~;)「おいひいです」

 

/▽▽「……今日だけだ」

 

ノハつ⊿;) ゴシゴシ

 

ノハ*^⊿^)「はい!ありがとうございます!!」

 

 

216:名無しさん:2023/10/09(月) 17:36:36 ID:yBN7QIIs0

 

 

 

/▽▽σ ピピピッ

 

 また10桁ほどの暗証番号で電子ロックキーを解除して、玄関の自動ドアが開く。

 

ノパ⊿゚)「たっだいまー!!」

 

 暗くなってから家に帰っても、家主であるぼっちゃんのお父さんは仕事で不在にしている。

 狗失格と怒られても、アタシは先に家に入りぼっちゃんを迎える形で振り向く。

 

ノパ⊿゚)「はい!お帰りなさいぼっちゃん!!」

 

/▽▽

 

ノパ⊿゚)「ぼっちゃん!お帰りなさい!」

 

/▽▽「……ただいま」

 

ノハ^⊿^)

 

 着ていた服を洗濯機に入れ、モドキ用洗浄室、要するにお風呂場で髪を含めて全身をくまなく洗う。

 

/▽▽っノハ*=⊿=)

 

 風呂上がりには、ぼっちゃんがドライヤーでアタシの髪を丁寧に乾かしてくれる。別にタオルで拭いて自然に乾けばいいが、ぼっちゃんはアタシの手入れをしたいようだ。

 

/▽▽

 

 口数少なくて本当はさみしがり屋なぼっちゃん、将来殺戮兵器の戦闘特化型だけど弱いものを痛ぶるのを嫌うぼっちゃん、甘いも苦いも味が苦手なぼっちゃん。アタシはこの家の狗だけど、寿命が尽きるまで君の側にいてあげたい。だけど

 

ノパ⊿゚)(ぼっちゃん、機械族だから肉は食べれないんだよなぁ)

 

 アタシの肉を食べて貰えない、それだけが残念でしょうがなかった。

 

 

 

     終

 

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