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|::━◎┥次世代ロボットのグルメレポートのようです

  【注意】猟奇的な表現を含む作品です。

2:名無しさん:2023/10/01(日) 22:14:30 ID:p9vZRJzE0

|::━◎┥ピッ

 

 私は自他共に認める最先端かつ高性能なロボットである。

 名は「歯車王」、型番号は「HGRM-001O」。

 その名の通り、内部には大小様々な歯車(モーターといってもよい)が組み込まれており、外装は白地に黒い歯車を彷彿とさせる紋様が施され、側面にも歯車をモチーフとした意匠が光る。我ながらなんと洗練され、かつスタイリッシュなデザインだろう。「王」という名を冠するのに相応しいではないか。

 

((|::━◎┥ウィーン

 

 サイズは幅×高さ×奥行きが353×92×353㎜、質量が3.8㎏。最高速度は500mm/s。障害物を検知する機能があるため、壁や家具を傷つける心配はない。また、高さ2cm程度の段差であれば、軽々乗り越えることも可能だ。

 フル充電すれば5時間は連続で稼働することができ、電力が不足する前に自ら充電スタンドへ向かうためオーナーの手を煩わせることもない。

 

|::━◎┥ピロロン

 

 Wi-Fiに接続してあれば、メールやスマートスピーカーの機能を使用でき、1日当たりの消費電力情報をメールで報告したり、「ハロー、歯車王」と声を掛ければ天気予報やニュースを読み上げたり、音楽を流すことだって難なくできる。

 にも拘わらず、我がオーナーは一度も私をWi-Fiに繋ごうとしない。何たる宝の持ち腐れであろうか。

 

3:名無しさん:2023/10/01(日) 22:15:30 ID:p9vZRJzE0

|::━◎┥ピロリン

 

|::━◎┥オハヨウゴザイマス、オーナー

 

|::━◎┥ワイファイニツナゲバ、ベンリナキノウガ(゚、゚#トソン「だー、うるせえ!!」ポチッ

 

(゚、゚#トソン「毎日毎日、朝っぱらから…」

 

(゚、゚#トソン「たかが“ロボット掃除機”にそこまで求めてねーよ!!」

 

4:名無しさん:2023/10/01(日) 22:16:19 ID:p9vZRJzE0

 

 

 

 

|::━◎┥次世代ロボット“掃除機”のグルメレポートのようです

 

 

 

.

 

 

5:名無しさん:2023/10/01(日) 22:17:24 ID:p9vZRJzE0

 「たかが」とは心外だ。床の上はもちろん、部屋の隅に溜まった埃も極細ノズルで塵一つ残さず吸い取りきる。外付けカメラにより、髪の毛一本も取り逃さない。液体ですらモップ機能で拭い取る。最先端技術の結晶のこの私に向かって、言って良いことと悪いことの区別もつかないとは。いくら高性能とはいえ、オーナー運には恵まれなかったということだろうか。

 

((|::━◎┥ウィーン

 

 Wi-Fiに繋がなくてもロボット掃除機としての領分を果たすことはできる。しかし、吸引したごみの量・成分を分析しレポート化することができず、ロボット掃除機「歯車王」としての本来の機能を発揮できているわけではない。

 何か、良いきっかけはないだろうか・・・。

 

6:名無しさん:2023/10/01(日) 22:18:35 ID:p9vZRJzE0

(>、<トソン ヘプチ

 

(゚σ゚トソン「あー、もう花粉飛んでんのかよ…」ズビッ

 

(゚、゚トソン「どんくらいこの部屋に花粉が溜まってるか、とかが分かったらな…」

 

 

|::━◎┥ピロリン

 

 

(゚、゚トソン「あ、そっか」

 

7:名無しさん:2023/10/01(日) 22:20:17 ID:p9vZRJzE0

 きっかけは案外些細なことだったりする。

 

(゚、゚トソン「えっと…、『スタート』ボタンと『+』ボタンを同時長押し…」ピピッ

 

 ずっとWi-Fiに繋ぐのを渋っていたにも拘らず、花粉の蓄積量を知りたいというニーズが発生した途端、手間を厭うことなく黙々と設定を進めていく。人間というのは、自分事に落とし込まれないとなかなか動けない生き物のようである。

 

|::━◎┥ポロロロロロロロロロロ(゚д゚#トソン「うるせえ!!」

 

 接続が無事完了した。オーナーが私を床へ置き、『スタート』ボタンを押す。いつもは充電スタンドから掃除を開始するが、今回は場所が違うためまずはセンサーで自らの位置を確認。これまで蓄積されたデータと照らし合わせ、ものの数秒で誤差を修正していく。

 

|::━◎┥ピッ

 

 位置情報データ補正完了。これより吸引および吸引物の分析を開始する。

 

8:名無しさん:2023/10/01(日) 22:22:38 ID:p9vZRJzE0

((|::━◎┥ウィーン

 

 モーターでファンを高速回転させ、床の上のごみを吸い込んでいく。いつもと違うのは、内部に搭載されたセンサーがそのごみを読み取ることだ。センサーは外付けカメラの映像データと共にデータセンターに繋がっており、全国各地から集まった塵埃のデータと照らし合わせることで、その内容を分析する。

 さて、今吸い取っているのはどうやら衣服由来の埃のようだ。繊維質でほのかに甘い・・・。

 

 

 ―――甘い?

 

 

((|::━◎┥ウィーン

 

 どうやら繋がっているのはデータセンターだけでなく、一般的なウェブサイトやSNSからも必要に応じて情報を取り入れているらしい。世の中にはモノ好きがいるようで、埃を食した感想を述べているブログがあり、その情報が引っ張り出された結果「甘い」という分析になったようだ。

 なるほど、確かに甘い。柔軟剤を彷彿とさせる人工甘味料のような、あるいは黴の香る水気の混じった風味。甘い、としか表現のしようがない。

 

9:名無しさん:2023/10/01(日) 22:25:20 ID:p9vZRJzE0

((|::━◎┥ウィーン

 

 窓の方へ進むと、風味が変わってきた。まずは土埃由来の、ワイルドでスパイシーな味。そしてやはり甘くはあるが、先ほどの綿埃とは違う甘さ。恐らくこれが花粉だろう。データベースと照らし合わせても間違いない。こいつがオーナーを困らせる諸悪の根源。この味を記憶媒体に保存しておく。

 それにしても土埃と花粉の組み合わせも悪くない。土埃だけだと鋭すぎてしまうところを、花粉がうまくマイルドにしてくれている。さらに、綿埃の甘さもより際立つように感じる。そう考えると、土埃は土埃で綿埃や花粉の良い引き立て役になっていると言えるのかもしれない。

 

((|::━◎┥ウィーン

 

 続いて内部に飛び込んできたのは、黒く細長い物体。これがオーナーの髪の毛だろう。キューティクルの状態はあまりよろしくなく、彼女の生活習慣の乱れが伝わってくる。しかしながら、単調になりがちな綿埃や土埃の食感とはまた違ったのど越しをもたらすと共に、動物性タンパク質としてのポテンシャルを強く発揮している。同様に、ダニの死骸や糞もこの掃除に十分な満足感を与えてくれる。

 

10:名無しさん:2023/10/01(日) 22:26:35 ID:p9vZRJzE0

|::━◎┥ヴーン

 

 一通り寝室の掃除を終え、充電スタンドへ。そして、オーナーのメールアドレスへ分析レポートを送信。

 

(゚、゚トソン「えーっと、綿埃、土埃…、あーやっぱ花粉も…、げっダニ!?」

 

( д ilトソン「うえっ、画像まで送りやがって…」

 

|::━◎┥ピロリン

 

 レポートの内容は吸引したごみの量と割合、そして画像。特に画像は3,000万画素の高画質でありのままの状態を送ることが可能だ。残念ながら味を伝える機能はないのだが、そこまで高望みするべきではないし需要はないだろう。とはいえ、Wi-Fiに繋がり「味覚」を手に入れたのだから、これまで以上にお掃除ロボットとしてのモチベーションが上がっていくというものだ。

 

11:名無しさん:2023/10/01(日) 22:28:14 ID:p9vZRJzE0

((|::━◎┥ウィーン

 

 今日も今日とて掃除と分析。ダイニングテーブル下は綿埃や髪の毛に加え、頻繁にパンのカスが落ちている。最近は綿埃と髪の毛を絡めて塊を作り、パンのカスをトッピングするのにハマっている。安定感のある家庭の味(物理)に、香ばしくカリカリとした食感の組み合わせは絶妙だ。

 

((|::━◎┥ウィーン、ズルッ

 

 今吸い込んだのは輪ゴムだろう。若干のど越しは髪の毛に似てなくもないが、髪の毛よりも圧倒的に太く存在感抜群だ。ゴム特有のぐにぐにとした感触と苦み。あまり他のごみとは一緒にせず、単品で美味しく頂きたい逸品だ。

 続いては白ごまだ。パンのカスほどの頻度ではないが、こちらもよく床に散らばっている。さらに飛び込んできたのは、これはラッキー、米粒だ。そういえば昨日、オーナーが米びつを補充していた。その際にこぼれ出たものだろう。ふわふわの綿埃に先ほどの白ごまと米粒をまぶす。食物由来の味はやはり力強いものがあるが、綿埃の甘さも負けてはいない。

 

12:名無しさん:2023/10/01(日) 22:30:43 ID:p9vZRJzE0

*ピョンッ

 

 おや、あれは・・・。

 

((|::━◎┥ウィーン “*カサカサ

 

 うーむ、追いつけない。よし、こういう時は限界突破モード!

 

((((|::━◎┥ブオオン “*!?

 

|::━◎┥シュポン

 

 内部のリミッターを一時的に解除することで、最高速度設定を無視した動きができる。さて、今取り込んだのは蜘蛛の子だ。まだ生きており、内部でかさかさと動いている。まるで踊り食いのようだ。しばらくの間はもぞもぞと小さな脚を動かしていたが、次々に飛び込んでくる綿埃に次第に追いやられ、いつの間にか動かなくなっていた。ああ、命というのはなんて儚いものなのだろう。

 それにしても、先ほどの蜘蛛の子は同じ動物性タンパク質のダニの死骸に比べ、やはり大きさが段違いで食べ応えがある。硬い外骨格の中には繊細な組織が詰まっており、滲み出てきた体液がみずみずしい。

 

13:名無しさん:2023/10/01(日) 22:32:38 ID:p9vZRJzE0

((|::━◎┥ウィーン

 

 脱衣所を掃除していると、髪の毛とは明らかに異なる人毛が入ってくる。長さは髪の毛よりも短く、縮れてごわごわした感触だ。レポート上ではどちらも体毛としてカテゴライズされるが、恐らくオーナーの急所を覆う役割を果たしていたのだろう。髪の毛ほどののど越しの良さはないが、オーナーの秘部に触れる背徳感が得も言われぬ味わいをもたらしてくれる。そこにフケも絡めれば、ねっとりとした人間臭さが加わり、塩気の強い他では味わえない傑作が出来上がる。

 

 

((|::━◎┥ウィーン

 

 それからも私は数多くのごみと出会ってきた。

 

((|::━◎┥ウィーン、カサッ

 

 シャープペンシルの芯の欠片、

 

((|::━◎┥ウィーン、ガサッ

 

 のど飴の包装袋、

 

((|::━◎┥ウィーン、チャリン

 

 オーナーのヘアピンや硬貨を吸い取ったこともある。

 シャーペンの芯は4Bと軟らかく、黒鉛由来のごりごりとした味わいが魅力的だ。のど飴の袋は溶けた飴がくっついていたのかほんのり甘く、無機質なプラスチックの袋に対して程よいアクセントになっている。ヘアピンや硬貨は金属の味が強く、一口頂いただけでお腹いっぱいになってしまう。(これらを吸い取ったときは、オーナーへメールで報告する)

 

 ああ、なんて素晴らしい日々だろう。毎日ロボット掃除機としての本分を果たしつつ、極上の味わいを日々享受することができる。私ほど恵まれているロボットはいるだろうか。これからも多くのごみに出会い、新たな味に触れていきたいものだ。

 

14:名無しさん:2023/10/01(日) 22:33:40 ID:p9vZRJzE0

("、"*トソン「うーっぷ、ったくよー、飲んでないとやってらんないっつーの」ヒック

 

|::━◎┥オカエリナサイ、オーナー

 

 最近、オーナーは毎日のように酒を大量に飲んで帰ってくる。

 

("、"*トソン「へーへー、ただいまかえりましたよー」

 

("、゚*トソン「ったく、コップ一杯の水も寄越さないで何が次世代ロボだよ」ヒック

 

|::━◎┥キテイリョウイジョウノアルコールドスウヲケンチシマシタ。オサケノリョウヲミナオシ(゚д゚*トソン「うるへえ!!」

 

15:名無しさん:2023/10/01(日) 22:35:20 ID:p9vZRJzE0

(゚、゚*トソン「口を開けばくどくどくどくど…、シュートメかっつーの…」ヒック

 

(゚、゚*トソン「…」

 

(゚、゚ilトソン「…」

 

 急にオーナーが静かになる。

 これはもしかすると・・・。

 

(゚m゚ilトソン「んぐっ!!」ウップ

 

( m ilトソン「おろっ…」

 

( д ilトソン「げええぇぇぇぇ!!」ビチャビチャ

 

 やはり戻したか。一度は手で押さえて我慢しようとした素振りはあったが、指の隙間から漏れ出た途端ダムは決壊した。そして床へと断続的に吐瀉物の山が積み重なる。

 

 

 ―――ああ、なんて美味しそうなんだろう!!

 

16:名無しさん:2023/10/01(日) 22:36:49 ID:p9vZRJzE0

|::━◎┥タイリョウノヨゴレヲケンチシマシタ、タダチニオソウジヲカイシシマス

 

((|::━◎┥ウィーン

 

 いざ、宝の山へ!

 

( д ilトソン「あー、サイアク…」

 

(゚д゚ilトソン「って、何してんの!!?」

 

((|::━◎┥ウィーン、ズズッジュルル

 

 おお、なんという至極の味!

 胃液のつんとした酸っぱい臭いにはじまり、オーナーが店で食べてきたであろう様々な食べ物の残滓が存在感を発揮する。人間はこんなにも美味いものを日々摂取しているのか。黄緑色のものは恐らく枝豆だろう。色の濃い緑とタンパク質の固形はそれぞれニラとひき肉で、ギョーザでも食べていたのかもしれない。

 モップを用いて床の上を拭い取るが、一往復では不十分で吐瀉物を広げるだけに終わった。これは何往復もしないといけない。

 

17:名無しさん:2023/10/01(日) 22:38:28 ID:p9vZRJzE0

((|::━◎┥ウィーン、ズオオオオ

 

( д ilトソン「やめろおおおおお!!」

 

 ノズルも駆使して固形物を吸い取るものの、いかんせん量が多く時間がかかりそうだ。だが、その分この甘美なる食事のひと時が続くのだ。丹念に、ひと吸いずつ、データとして蓄積してゆこう。

 床の上の埃やオーナーの髪の毛も混ざり、さらにご馳走の山は彩られていく。この甘さは何だろうか、埃や吐瀉物とも違う。・・・そうか、オーナーの唾液だ。一口に人間の体液と言っても、唾液と胃液でこんなにも違うのか。

 オーナーから排出される様々なエッセンスを取り込むこの行為を通じて、まるで私とオーナーが一体になったのではないかと錯覚する。

 

18:名無しさん:2023/10/01(日) 22:40:55 ID:p9vZRJzE0

( д ilトソン「おええええええ!!!」ビチャビチャ

 

 自分の胃液の臭いにやられたのか、オーナーは再度吐き出した。

 よりによって、この私の上に!

 

 なんということだ。私はこの瞬間に自身の致命的な欠点に気付いた。私は、周りを綺麗にすることはできても私自身を掃除することができないのだ。少しでも、少しでもいい。私に降り注いだ甘美なるあの味を・・・。

 最初の嘔吐よりも胃液の臭いが強い。胃の内容物はほとんど吐き出されたか、消化されたのだろう。食物の少ない、より人間本来の味へ・・・。私はそれを求めて生まれてきたのだ!

 

((((|::━◎┥ブオオン   |壁

 

 私はリミッターを解除し、一気に壁へ突進する。がつん、という衝撃音と共に機体が一瞬浮き上がる。しかし、結果としては壁にほんのり吐瀉物を擦り付けただけでまだ不十分だ。

 

( д ilトソン「てめっ、ふっざけんなよおおお!!!」

 

 オーナーが何やら叫んでいるが関係ない。これは私自身の戦いなのだ。モーターを逆回転させ一度壁から距離を取る。そして先ほどよりも勢いをつけて壁へと突撃する。

 

(((((((((|::━◎┥ブオオオオオン |壁

 

 がしゃん、と大きな音を立てて前輪が壁を駆け上がり、吐瀉物は機体から少しずつ流れ出す。

 ようやく、ようやく、私はあの味に辿り着くことができるのだ。ああ、早く味わいたい!

 

19:名無しさん:2023/10/01(日) 22:43:01 ID:p9vZRJzE0

 私はモーターを逆回転させ、体勢を立て直そうとする。だが、車輪は空回るばかり。そこで私は気付いた。カメラの映像の天地が逆さまになっている。どうやら私は勢い余ってひっくり返ってしまっているようだ。このままではまずい、が、モーターも車輪もノズルもモップもセンサーもWi-Fiも、今この瞬間には何の役にも立たない。私はなすすべもなく重力に従い床へと叩きつけられた。

 

 

がっしゃーん!

 

 

 カメラの映像が乱れる。ノイズ交じりの視界に、白い欠片が散乱している光景が入ってくる。恐らく私の割れた外装の破片だろう。

 ・・・ああ、早く片付けなくては。私は自らを動かそうとモーターを作動させようとするも、車輪はぴくりとも動かない。回路をやられたのだろうか。そもそもモーターが生きていても、ひっくり返ったままではどちらにせよ走行することは不可能か。映像が白黒になる。そういえば、あれほど強烈だった胃液の臭いが一切しない。そうか、センサーも機能を失っているのか。ノズルはどうだろう。よし、まだ動かせる。私は限界までノズルを伸ばし、床へと近付ける。せめて一口だけでも、味わうことはできないだろうか。どうにかノズルは床に届いた。しかし、わずかに残っている吸引機能を使っても何も感じない。私は味覚を失ったのだ。

 

 

 

 

 

 ―――映像信号が途絶えた。

 

20:名無しさん:2023/10/01(日) 22:43:34 ID:p9vZRJzE0

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

.

 

 

21:名無しさん:2023/10/01(日) 22:45:28 ID:p9vZRJzE0

(十)ピコンッ

 

 私は自他共に認める最先端かつ高性能なロボットである。

 名は「原子王」。先代「歯車王」の後継機として開発された。

 先代「歯車王」には、機体自体が汚れると自らを掃除しようと暴走する不具合があったため、メーカーが自主回収を行った。なんと嘆かわしいことだろうか。

 その不具合を改善すると共に、よりコンパクトでスマートなデザインを持ち合わせたのが、私「原子王」なのである。しかも駆動音がより小さくなり、Wi-Fiに接続する手間も大幅に減っている。

 

 

 そして今、お掃除ロボットとして最初の仕事を開始する。

 

(((十)スッ

 

 ああ、我ながらなんとスマートな走り出し。早速、吸引を行うと同時に分析を開始する。今吸い取っているのはどうやら衣服由来の埃のようだ。繊維質でそして―――

 

(十)アマイ

 

 

 

 おわり

​◆支援絵

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