ブーン系
食と旅の秋祭り
2: ◆0tD.jsKBkQ:2023/10/02(月) 00:46:06 ID:XsbPHSQw0
東京都、大田区にある歓楽街から離れた場末の住宅街。
その店はぽつねんとそこにある。
夜になれば赤提灯が暖かな光を灯し、酒飲み共を静かに呼び込んでいる。
酒飲み達は、今日もふらりと暖簾をくぐる。
3: ◆0tD.jsKBkQ:2023/10/02(月) 00:46:29 ID:XsbPHSQw0
( ^ω^)小料理屋『武運』のようです
~秋祭り特別編のようです~
.
4: ◆0tD.jsKBkQ:2023/10/02(月) 00:47:11 ID:XsbPHSQw0
ξ ⊿ )ξ「…………」
ガラガラ……
( ^ω^)「おっ!ツン、いらっしゃいませだおー」
ξ ⊿ )ξ「八年……振りね」
(;^ω^)「……?ツンは昨日も来てたお?
給料出たからって散々飲んで店先でドクオにチョークスリーパーかけてたお?」
ξ゚⊿゚)ξ「八年、わからない。何の記憶だろう」
( ^ω^)「これ以上この話題に触れるのはアカシックレコードがバグる危険性がありそうだお。
辞めた方が身のためだお」
ξ-⊿-)ξ「そうね……」ヨッコイショ
5: ◆0tD.jsKBkQ:2023/10/02(月) 00:49:03 ID:XsbPHSQw0
ξ゚⊿゚)ξ「とりあえずビールちょうだいな」
( ^ω^)「はいはい。いつものだおね」
ξ゚⊿゚)ξ「今日のつきだしはなにー?」トプトプ
( ^ω^)「大根の鶏そぼろ煮だおー」コト
ξ゚⊿゚)ξ「あ、美味しいやつ」
( ^ω^)「ブーンも大好きだお。ビールでも日本酒でも焼酎でもイケるおね」
ξ゚⊿゚)ξ「うんうん、中華風にしたりすると紹興酒とかハイボールでもいいわよね」
6: ◆0tD.jsKBkQ:2023/10/02(月) 00:49:26 ID:XsbPHSQw0
ξ゚~゚)ξ「んー♪味染みてるー」モグモグ
ξ゚⊿゚)ξ「んっんっんっ」ゴクゴク
ξ>⊿<)ξ「プハーッ!うめぇなおい!!」
( ^ω^)「嫁入り前の娘の飲み方じゃねぇお」
ξ゚⊿゚)ξ「お?戦争か?」
(;^ω^)「き、今日はどうするお?」
ξ゚⊿゚)ξ「そうねー」
7: ◆0tD.jsKBkQ:2023/10/02(月) 00:50:28 ID:XsbPHSQw0
ガラガラ……
('A`)「八年……」
川 ゚ -゚)「振りだな……」
( ^ω^)「擦るな擦るな。なんなんだお。こえーお。
あといらっしゃいませですお」
ξ゚⊿゚)ξ「あ、こんばんはー」
('A`)「おーおばんでやす」ヨッコラセ
川 ゚ -゚)「今日はツンが先だったか。お、今日は大根のそぼろ煮か」ドッコイショ
8: ◆0tD.jsKBkQ:2023/10/02(月) 00:51:04 ID:XsbPHSQw0
ξ゚⊿゚)ξ「ままま、駆け付け一杯」トプトプ
川 ゚ -゚)「おとととと……」
('A`)「お、さんきゅー。ブーン、もう一本ビールいれてくれ」
( ^ω^)「あいおー」
ξ゚⊿゚)ξ「はい、それじゃーとりあえず」
ξ゚⊿゚)ξ川 ゚ -゚)('A`)「お疲れ様ー」カチーン
ゴクゴクゴク……
プハーッ
9: ◆0tD.jsKBkQ:2023/10/02(月) 00:51:26 ID:XsbPHSQw0
('A`)「ん、そぼろ煮旨いなー。俺これカブのも好きだわ」
( ^ω^)「カブはちょっとまだ時期が早いおねー。おいしいけど」
川 ゚ -゚)「カブっていつごろが旬なんだ?一年中あるからわからん」
( ^ω^)「だいたい11月から1月の冬の野菜だおね。柔らかくて甘みも増えるお」
('A`)「あー根菜だもんな」
( ^ω^)「大根もこれからどんどん太くなってくから美味しくなるおー」
ξ゚⊿゚)ξ「おでん……ふろふき大根……ブリ大根……」ジュルリ
( ^ω^)「ラインナップが酒飲みのそれ」
10: ◆0tD.jsKBkQ:2023/10/02(月) 00:51:48 ID:XsbPHSQw0
川 ゚ -゚)「それで、今日のおすすめはなんだ?」
( ^ω^)「ふっふっふ」
('A`)「なんだその不敵な笑い」
( ^ω^)「実は、こういうものを仕入れたんだお」ドンドン
ξ゚⊿゚)ξ「日本酒?あ、天狗舞。だけどラベルが違うわね」
川 ゚ -゚)「春鹿もあるな。これもラベルがいつもと違うな」
( ^ω^)「これ、二つともひやおろしなんだお」
ξ゚⊿゚)ξ「ひやおろし?なんか聞いたことあるけど」
11: ◆0tD.jsKBkQ:2023/10/02(月) 00:52:51 ID:XsbPHSQw0
( ^ω^)「ひやおろしっていうのは、去年の冬に絞った生酒を春に一回火入れしたお酒だお」
( ^ω^)「火入れして熟成させて、夏を過ぎたころ2度目の火入れをしないお酒だおね」
( ^ω^)「秋に出る旬のお酒。って思ってもらえればいいお」
ξ゚⊿゚)ξ「へー。なんか特別感あるわね」
川 ゚ -゚)「ひやおろしは生酒と違いきちんと熟成させているので生酒のような荒々しさは少ない感じだな」
('A`)「だけどフレッシュさは残してるよな。少し甘めに感じるのが多い気もするが」
( ^ω^)「べったりした甘さよりも果実的な甘さのイメージが近いおね」
12: ◆0tD.jsKBkQ:2023/10/02(月) 00:53:11 ID:XsbPHSQw0
( ^ω^)「そんなわけで!今日は旬のお酒に合わせる秋の旬の食材祭りだお!」
('A`)「おー」
川 ゚ -゚)「食欲の秋というほどだからな。この時期から美味しくなるものが多いから楽しみだ」
ξ゚⊿゚)ξ「豪勢ねー!なんかあったの?」
( ^ω^)「八年……振りだからおね」
ξ゚⊿゚)ξ「いやお前も擦るんかい」
('A`)「秋といえば、松茸はあるのかー?」
( ^ω^)「あー、松茸はね……原価がね……。仕込んでも頼まれないと大赤字だから……」
('A`)「ああ……」
20: ◆0tD.jsKBkQ:2023/10/03(火) 22:26:09 ID:0XNCmUI.0
(;^ω^)「秋のきのこは何でもおいしいお!松茸だけがきのこじゃないお!」
('A`)「わかった。わかったから。頼むから」
川 ゚ -゚)「言うて、松茸そんな美味しいか?」
ξ゚⊿゚)ξ「値段でありがたがってる印象あるわよねー。外国じゃあれでしょ?人気ないんでしょ?」
川 ゚ -゚)「死体の匂いがするって言うな」
('A`)「俺……結構好きなんだけど……」
( ^ω^)「美味しい松茸料理は美味しいお。まぁ、文化の違いとかもあるとは思うけど……」
ξ゚⊿゚)ξ「とにかく、今日は秋の旬尽くしってことね」
23: ◆0tD.jsKBkQ:2023/10/06(金) 21:50:20 ID:9tMmztVE0
( ^ω^)「そ!ということでまずはカツオのたたきだおー」
('A`)「お!カツオか!」
川 ゚ -゚)「そうか。戻りガツオの時期か」
ξ゚⊿゚)ξ「焼き目もいいわねー」
( ^ω^)「カツオは丸で買ってうちで捌いて七輪で藁焼きにしたおー」
('A`)「うお、脂すげぇなぁ」モグモグ
川 ゚ -゚)「薬味たっぷりなのも嬉しいな。みょうががいい」モグモグ
( ^ω^)「みょうがも秋が旬なんだお」
ξ゚⊿゚)ξ「ん~!皮の香ばしさと身の脂のバランスが最高よね!」モグモグ
( ^ω^)「はい!そこでこれ!春鹿ひやおろし!」ドン
24: ◆0tD.jsKBkQ:2023/10/06(金) 21:50:54 ID:9tMmztVE0
川 ゚ -゚)「ほお!春鹿といえばかなりの辛口のイメージだったが!」クピ
ξ゚⊿゚)ξ「すっごい華やか!こう、香りがふわーって!」
('A`)「あー、こりゃカツオに合うな。いい感じに脂を流してくれる」
( ^ω^)「だおだお。春鹿のキレを残しつつ、華やかな香りが香ばしいタタキと会うお?」
ξ゚⊿゚)ξ「これ、まずいわ。エンドレスループになって止まらないやつだわ」
('A`)「チョークスリーパーはもう勘弁」
ξ゚⊿゚)ξ「役得でしょうが!」
('A`)「硬かった……後頭部が……胸骨で……」
ξ゚⊿゚)ξ「殺すぞ?」
25: ◆0tD.jsKBkQ:2023/10/06(金) 21:51:34 ID:9tMmztVE0
(;^ω^)「だからうちで流血沙汰は勘弁するお。はい、次の料理!」
川 ゚ -゚)「お、ホイル焼きか」
('A(#)「わーいドクオ、ホイル焼き大好き」
ξ゚⊿゚)ξ「こいつ……無敵か?」
川 ゚ -゚)「慣れてるから」
ξ゚⊿゚)ξ「詳しくは聞かないでおくわ」
('A(#)「お!鮭かー!」
( ^ω^)「強い子だお」
26: ◆0tD.jsKBkQ:2023/10/06(金) 21:53:17 ID:9tMmztVE0
ξ゚⊿゚)ξ「うわ、きのこもいっぱいねー」
川 ゚ -゚)「この開けたときの香りがたまらんな。これだけで呑めそうだ」
('A`)「お、鯵つけはちょっと洋風?」モグ
( ^ω^)「だお、コンソメとバターと塩コショウだけでシンプルにしてみたお」
川 ゚ -゚)「素材の味が引き立つな鮭の香りが良い」モグモグ
ξ*゚⊿゚)ξ「あー下に引いてあるタマネギうまー!あまーくなってる!」モグモグ
( ^ω^)「半分くらい食べたら、これをかけてみるお」コト
('A`)「これは?」
( ^ω^)「わさびマヨネーズだお」
27: ◆0tD.jsKBkQ:2023/10/06(金) 21:53:44 ID:9tMmztVE0
('A`)「お、こりゃいい。こってりしてるのにわさびの香りが」モグ
ξ゚⊿゚)ξ「やべぇ、ご飯欲しい」モグモグ
川 ゚ -゚)「ほれ、飲むご飯だ」トクトク
ξ゚⊿゚)ξ「っかぁー!たまんねぇなおい!」キュー
( ^ω^)「どんどんおっさん化が進んでいるお。戻ってくるお」
川 ゚ -゚)「違うぞブーン、どちらかというと素が出ているだけだと思うぞ」
ξ゚⊿゚)ξ「なんでバレてんのよ」
28: ◆0tD.jsKBkQ:2023/10/06(金) 21:54:15 ID:9tMmztVE0
( ^ω^)「脂が強いのが続いたから、箸休めにこれどうぞだお」コト
ξ゚⊿゚)ξ「あ、サラダ?うれしー」
( ^ω^)「サラダじゃなくておしんこだお」
川 ゚ -゚)「ほう、キャベツときゅうりが入ってるからサラダかと思ったな」
('A`)「あ、これ刻んだみょうがと生姜が入ってるぞ。口の中がさっぱりする」モグ
( ^ω^)「キャベツ、きゅうり、みょうが、生姜を刻んで塩もみしたものだお」
川 ゚ -゚)「うむ。歯ごたえが楽しい」シャキシャキ
ξ゚⊿゚)ξ「あ、これでも日本酒飲める」
29: ◆0tD.jsKBkQ:2023/10/06(金) 21:54:42 ID:9tMmztVE0
( ^ω^)「ふっふっふ。おしんこを出したのは舌を新しくして欲しかったからだお」コト
(*'A`)「お!土瓶蒸しじゃん!松茸なかったんじゃないのか!」
( ^ω^)「すまんお、松茸じゃなくて舞茸の土瓶蒸しだお」
川 ゚ -゚)「舞茸か。初めてだが、あの香りなら絶対美味しいやつだな」
ξ*゚⊿゚)ξ「私実は土瓶蒸し初体験なのよねー」ワクワク
('A`)「……いや、贅沢は言うまい。これはこれで美味しそうだ」
( ^ω^)「まぁまぁ、試してみるお」
30: ◆0tD.jsKBkQ:2023/10/06(金) 21:55:08 ID:9tMmztVE0
川*゚ -゚)「ほう……このお出汁は……」
ξ*゚⊿゚)ξ「おいしー!」
(*'A`)「あーほっとする味だ。香りもいい」
( ^ω^)「一口飲んだら、今度はすだちを絞ってみるといいお」
ξ*゚⊿゚)ξ「うわーこれめちゃくちゃ日本酒に合うわね」
(*'A`)「具も沢山入ってるな」
( ^ω^)「舞茸、エビ、鶏肉、銀杏、かまぼこ、三つ葉だお」
川*゚ -゚)「舞茸は天ぷらが最強だと思ってた」モグモグ
31: ◆0tD.jsKBkQ:2023/10/06(金) 21:55:44 ID:9tMmztVE0
( ^ω^)「さて、繊細なお味の次はどっしりしたのでいくお」コト
ξ゚⊿゚)ξ「鯖味噌!」
川 ゚ -゚)「勝ったな」
('A`)「クー本当鯖好きな」
川 ゚ -゚)「鯖に限らず青魚はなんでも好きだ」
( ^ω^)「お酒も春鹿から天狗舞に変えるお。
鯖の脂を迎えるのにはこっちのがきっと合うはずだお」
ξ゚⊿゚)ξ「うわ。香りすご。まだ口に入れてないのに」
('A`)「こりゃいいな。鯖味噌食った後に天狗舞で流すと最高だ」
川 ゚ -゚)「煮方も見事だ。全然身がパサついてないぞ」
32: ◆0tD.jsKBkQ:2023/10/06(金) 21:56:13 ID:9tMmztVE0
( ^ω^)「そう言って貰えると嬉しいお
〆は豚汁だおー」
('A`)「お、これもまた具沢山だな」
( ^ω^)「ごぼう、にんじん、里芋も秋が旬だお」
ξ゚⊿゚)ξ「うまー。豚汁ってそれだけでおかずとかつまみになっちゃうわよねー」
( ^ω^)「炊き込みご飯と豚汁あったらおかずいらんおね」
川 ゚ -゚)「これめちゃくちゃ天狗舞に合う」
( ^ω^)「〆だっつってんだろ」
33: ◆0tD.jsKBkQ:2023/10/06(金) 21:56:38 ID:9tMmztVE0
('A`)「いやぁ旨かった旨かった」
川 ゚ -゚)「食欲の秋というのも頷けるな」
( ^ω^)「天高く馬肥える秋だおねー」
ξ゚⊿゚)ξ「酒飲みには秋冬は嬉しい季節であると同時に恐怖の季節よね」
川 - )「体重計が恐ろしくて仕方ないな」
ξ ⊿ )ξ「去年買った服がキツくなってた時の絶望感よ……」
(;'A`)「日本酒控えれば?」
川 - )「馬鹿を言うな、この時期から美味しくなるものを考えてみろ」
ξ ⊿ )ξ「身が引き締まって脂の乗った海鮮、瑞々しく甘い大根、それを全て受け止める日本酒」
34: ◆0tD.jsKBkQ:2023/10/06(金) 21:57:07 ID:9tMmztVE0
(;^ω^)「ハイボールとか焼酎とかに合う料理にするかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「もちろんその二つも好きだけど、ここに来るようになって日本酒派になってきちゃったのよねー」
川 ゚ -゚)「つまりブーンが悪いってことだな」
( °ω°)「責任転嫁ァ!!」
('A`)「あ、でもたまにはハイボールとかもいいな」
川 ゚ -゚)「だがな、ハイボールに合うつまみって大抵ハイカロリーなんだ」
ξ゚⊿゚)ξ「酒のカロリーがつまみに移っただけよね」
( ^ω^)「ああ、それは……たしかに」
35: ◆0tD.jsKBkQ:2023/10/06(金) 21:57:39 ID:9tMmztVE0
ξ-⊿-)ξ「結局、自制しなきゃいけないのよねー」
( ^ω^)「まぁ、それが一番だおね」
川 ゚ -゚)「それができたら苦労はしてないわけだがな」
('A`)(ここで何か言うのは藪蛇だ。黙っていよう)チビチビ
ξ゚⊿゚)ξ「よーし!明日から暫く禁酒しよ!
( ^ω^)「お、偉いお」
ξ゚⊿゚)ξ「その分今日飲むわ!天狗舞と豚汁おかわり!」
川 ゚ -゚)「あ、こっちもこっちも」
(;^ω^)「それじゃあ意味ねぇお……」
36: ◆0tD.jsKBkQ:2023/10/06(金) 21:58:21 ID:9tMmztVE0
東京都、大田区にある歓楽街から離れた場末の住宅街。
その店はぽつねんとそこにある。
酒飲み達の陽気な笑い声に、店先の赤提灯が静かに揺れる。
引き戸を開けて、暖簾をくぐれば出汁の匂いがふわりと香る。
その店は
( ^ω^)小料理屋『武運』のようです