ブーン系
食と旅の秋祭り
34
( ^ω^)ガキノモリ事件のようです
【注意】猟奇的な描写を含む作品です。
1:名無しさん:2023/10/08(日) 19:42:38 ID:lrpTdIvI0
( ω )「告白します」
( ω )「僕達はあの事件の被害者です」
( < >< >)「数年前、私達は知らない人に誘拐されました」
( < >< >)「そしてカミサマの社に、数日間監禁されてました」
( _ )「見つかったとき、ボクたちは抱き合うようにして眠っていた、そうです」
( _ )「よく、覚えていません。ボクたちには事件の記憶があまりありません」
.
2:名無しさん:2023/10/08(日) 19:43:17 ID:lrpTdIvI0
爪 ー )y‐「けれども、聞いてください」
爪 ー )y‐「俺達は弱っていたけれども、傷ついていたけれども、こうして生きています」
川 々 )「聞いてください。犯人はまだ捕まってません」
川 々 )「どうかこのまま、あの人を探さないであげてください」
「それが僕達の」
「それが私達の」
「被害者の願いです」
( ^ω^)ガキノモリ事件のようです
.
3:名無しさん:2023/10/08(日) 19:44:02 ID:lrpTdIvI0
「ふんっ。おはようございます」
「おはようだお!」
「おはよーござまーす!」
「おはようだお!」
「あら~!おはようさん♪」
「おはようだお!」
「ひぃっ。お、おは、よ、ござっまっ」
「おはようだお!」
「ブーンくん、おはよう!」
「おはようだお!」
──学校
(´・ω・`)
バシンッ
(;´・ω・`)「いったぁ!!」
( ^ω^)「おはようだお、ワカッテマスくん!」
(;´・ω・`)「諸本くん、だってば!なんでいつも背中ひっぱたくんだよぉ」
( ^ω^)「おっおー!おはようだお、諸本くん!」
(´・ω・`)「やあ、おはよう。内藤くん!」
( ^ω^)「なんで教室の前で突っ立ってるんだお?
昨日もおんなじことしてたおね?」
(;´・ω・`)「そ、それはっ」
.
4:名無しさん:2023/10/08(日) 19:44:49 ID:lrpTdIvI0
ギュッ
( ^ω^)「手、冷たいお。氷みたい」
(;´・ω・`)「ひえぇ……」
(;´・ω・`)(手!手つながれてる!どうしよう、これって、すっごく!友達っぽい!!)
( ^ω^)「どうしたんだお?はやいとこ中に入ろうお、廊下は寒いったらないお!」
( ^ω^)「教室に入る時のおまじない、忘れちゃったお?」
(;´・ω・`)「えー、あー、そういうわけじゃ、ない、けど……」
( ^ω^)「こうするんだお!僕の真似してやってみせてお!」
( ^ω^)人 パンパンパン
(;´・ω・`)人 パンパンパン
( ─ω─) ペコリ
(;´-ω-`) ペコリ
( ─ω─)「あかときのみたまや、まがもの、のろませ、ひとのこ、おはいりませ」
(;´-ω-`)「あかときのみたまや、まがもの、のろませ、ひとのこ、おはいりませ」
( ^ω^)「僕等の教室に入るときは一日二回こうすればいいんだお!」
グイッ
(;´・ω・`)「わわ、ちょっ!引っ張らないで!」
.
5:名無しさん:2023/10/08(日) 19:45:45 ID:lrpTdIvI0
ガラガラ
(*^ω^)「はあぁぁぁ、教室あったかぁいお!」
(;´・ω・`)「もう。君はいつも強引なんだから!」
(*^ω^)「諸本くんもはやくコート脱ぐお!」
(´・ω・`)「あっ……。うん……」
(´・ω・`)(嫌だな)
(´・ω・`)(見られたく、ないな)
バサッ...
(´・ω・`)
ヒソヒソ
コソコソ
「来たよ、噂の転校生」
「諸本家の『サイコ』か」
(´・ω・`)
「腰につけてるアレがその証拠だ」
「おっかない、おっかない」
(´・ω・`)
「外の世界のいろんな学校で問題を起こしたんでしょ?」
「どこにもいられなくなって、この町に帰ってきたんだって」
(´ ω `)
「シャキン様もお可哀想に」
「あんなのがサイコでシャキン様は気の毒だ」
ヒソヒソ
コソコソ
.
6:名無しさん:2023/10/08(日) 19:46:22 ID:lrpTdIvI0
(´ ω `)(……だめだよ)
カタッ
(´ ω `)(傷ついちゃだめ)
カタカタ
(´ ω `)(だめ、だめ、だめ)
カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ
カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ
( ^ω^)「諸本くん!」
(´・ω・`) ハッ
( ^ω^)「そうだったお!君は友達の諸本くん!」
(´・ω・`)「……ふふっ。うん、君の友達の諸本くん」
( ^ω^)「昨日転校してきた諸本くん!」
(´・ω・`)「五日前に転校してきた諸本くん」
( ^ω^)「クラスメイトの諸本くん!」
(;´・ω・`)「と、隣の席の諸本くん……」
( ^ω^)「うーん?」
(;´・ω・`)「あー!あー!しょうがないことだよ、ほら、僕なんかさ!
新しく町に来た人の教習?っていうので、ほとんど教室にいなかったもんね!」
(´・ω・`)「それにね、内藤くんが人のこと覚えるの苦手なのは知ってるよ!
だって、君ときたら!クラスメイトのことすら覚えてやしないんだもん!」
( ^ω^)「友達のことは思い出せるんだお。オカルト大好きな諸本くん!」
(;´・ω・`)「ひえぇ!怖いもんは大っ嫌いだってばー!」
( ^ω^)「くっくっく!これも思い出したお、諸本くんはからかうと面白いお!」
(;´・ω・`)「そんなこと思い出さなくていいの!」
.
7:名無しさん:2023/10/08(日) 19:47:00 ID:lrpTdIvI0
(´・ω・`)「……あのさ」
(´・ω・`)「君はさ、気にならないの?僕がいつも制服の上から体につけてるもの……」
(´ ω `)「このハーネスにぶら下げてあるものが」
カタンッ
( ^ω^)「よく分かんないけど、大切なものなんだおね?」
( ^ω^)「もういっこ覚えてるお!諸本くんには運命の糸が見えるんだお!」
(´・ω・`)「あっ……、うん……」
(´・ω・`)「こんなん嘘っぱちだと思うよね……」
( ^ω^)「とっても素敵な呪いだと思うお!」
(´・ω・`)「……えっ?」
(´・ω・`)(そんなこと初めて言われたや)
( ^ω^)「糸を見た人達の運命が分かるんだおね?」
(´・ω・`)「そんな便利な能力だったらどんなに良かったか」
(´・ω・`)「僕にはただ、人と人のつながりみたいなもんが、
指と指に結ばれた糸に見えちゃうだけだよ」
( ^ω^)「すごい超能力だと思うお!」
(´・ω・`)「えへへ。そんなことないよ」
(´・ω・`)「諸本の人達はね、この能力を【イトシキ】って呼んでるんだ。
どういう漢字で書くかは忘れちゃったけど」
( ^ω^)「いとしき?」
(´・ω・`)「僕はお嫁に来たお母さん似でね、
諸本の一族の血が薄いみたいだから、糸が見える時と見えない時があるんだ」
(´・ω・`)「それに比べて兄さんはすごいんだよ。
諸本の血筋のお父さん似だから、僕よりずっといろんな糸が見えてる」
.
8:名無しさん:2023/10/08(日) 19:47:48 ID:lrpTdIvI0
(´・ω・`)「僕と兄さん、双子なのにまるで違うんだ。
背中をくっつけて生まれてきたのかもね」
( ^ω^)「ふぅん」
(´・ω・`)「この町の偉い人たちだって兄さんに会いに来るんだ。
町の偉い人のご先祖様と、諸本のご先祖様は、代々一緒にお仕事してるんだってさ」
(´・ω・`)「ほんとに、ほんとに、すごい人なんだよ。
兄さんはみんなにこう呼ばれてるんだ、『シャキン様』って」
( ^ω^)「諸本くんは『サイコ』なんだおね」
(´・ω・`)「みんな僕のことそう呼ぶけど……それって悪いこと?」
( ^ω^)「僕も『サイコ』だお!サイコって言うのは、弟とか妹って意味だお!」
(´・ω・`)「それだけ?」
( ^ω^)「それだけ!」
( ^ω^)「君の兄貴も転校生なのかお?」
(´・ω・`)「兄さんは違うよ。おんなじ年だけどね、もう働いてるんだ」
(´・ω・`)「僕はちっちゃいときにこの町の外に出て、数日前に帰ってきたけどね、
兄さんは生まれたときからずっとこの町にいる」
(´・ω・`)「諸本家に必要とされてるから」
(´・ω・`)「だから僕、兄さんと一緒に住んだことないし、
兄さんの本当の名前も知らないし、兄さんの顔すらあんまり覚えてないんだ」
( ^ω^)「僕にも兄貴がいるお!会ったことないから覚えてないお!」
(´・ω・`)「お揃いだね、僕達?」
( ^ω^)「おん!僕達はサイコ友達だお!」
(´・ω・`)「えへへ」
.
9:名無しさん:2023/10/08(日) 19:48:36 ID:lrpTdIvI0
( ^ω^)「イトシキ糸、いまも見えてるんだお?」
(´・ω・`)「あっ、うん。見えてる、けど」
(´・ω・`)「どうせならもっとかっこいい能力が欲しかったな。
だれかさんの人間関係が見えたってさ、なんにも美味しいことありゃしないもん」
(´・ω・`)(いつも仲よしのあの子とその子、
なんと、あの子はその子をとっても憎んでいるのだ)
(´・ω・`)(いつもケンカばかりのあの男の子とあの女の子、
なんと、二人は隠れてお付き合いしているのだ)
(´・ω・`)(転校してきたばかりの僕と知らない子ら、
なんと、知らない子らは話したこともない僕を嫌っているのだ)
(´・ω・`)(この町ならば、なにかが変わると思ったのになぁ)
(´・ω・`)(だってこの町は、『暁廟(あきときみたまや)町』は、とっても変わってるもの)
( ^ω^)「僕と諸本くんはどんなに美味しい糸でつながってるお?」
(´・ω・`)「えっとぉ……」
(´・ω・`)(僕達の間には糸がないんだ)
(´・ω・`)(……なんてね、言えないよね)
(´・ω・`)(どうしてだろう?なかよしなのに。友達の糸があるはずなのに)
(´・ω・`)(それとも、ほんとは、違うのかな……)
(´・ω・`)「ふふっ。それにしても意外だったな」
( ^ω^)「おん?」
.
10:名無しさん:2023/10/08(日) 19:49:20 ID:lrpTdIvI0
(´・ω・`)「学校に来るとき挨拶してたでしょ?」
(´・ω・`)「内藤くんが噂の『あの優等生くん』、『あの問題児ちゃん』、
『あのアイドルくん』、『あのヒキコモリくん』、
『あの生徒会長ちゃん』と知り合いだなんてさ!」
(´・ω・`)「ひょっとして噂の『あの影くん』って君のことだったりして?」
( < >< >)
川 々 )
爪 ー )y‐
( _ )
ξ ⊿ )ξ
( ^ω^)
(´・ω・`)「よく分からないけどさ、暁廟町じゃあ有名人なんでしょ?」
( ^ω^)「知り合いじゃないお?」
(´・ω・`)「じゃあ、友達?」
( ^ω^)「なかよしの友達でもないお?」
(´・ω・`)「えっ?それなら君達、なんだって言うの?」
( ^ω^)「僕達は……」
( _ゝ )「おんなじ『被害者』だよな?」( <_ )
.
11:名無しさん:2023/10/08(日) 19:49:58 ID:lrpTdIvI0
(´・ω・`)「ひがい、えっ?」
パシャッ
( >ω<)「おっ!」
(;うω・`)「まぶしっ」
( ´_ゝ`)「内藤くん、益若くん、素直さん、小森くん、狐塚くん……。
この五人こそが!例の事件の『被害者』になった子供達なのだ!」
(´<_` )「津出さんだけはちょっぴり違うけれどもな」
( >ω^)「おん?」
( ´_ゝ`)(´<_` )
(´・ω・`)(おんなじクラスの『流石くん』だ……)
( ´_ゝ`)(´<_` )「くすくす」
シュルッ...
(´・ω・`)(相っ変わらずおっかない糸で結ばれてる……)
ジィ-...
ピラッ
( ´_ゝ`)「ほら見ろ、よく撮れてるぞ!
どんな宝石よりも貴重な『被害者』の写真だ!
おまけに噂の転校生まで写ってる!」
(´<_` )「見せて」
( ´_ゝ`)「この内藤くんの驚いた顔ときたら!
おかしいったらないだろう?くすくす、くすくす」
(´<_` )「くすくす」
( ^ω^)「フォックスくん、おはようだお!」
(´・ω・`)「流石くんね、流石くん」
( ´_ゝ`)「ごきげんうるわしゅう!内藤くん、諸本くん!」
(´<_` )「おはよう、二人共」
.
12:名無しさん:2023/10/08(日) 19:50:32 ID:lrpTdIvI0
(´・ω・`)「流石くんも『俺はフォックスくん』じゃないって否定した方が……」
( ´_ゝ`)「いやなに、内藤くんを尊重してだな、
いっそ好きなように呼ばせてやろうと思ってるんだ」
( ´_ゝ`)「俺という男はなんと優しいのだろう!
これぞまさしく長男に相応しい!そう思うだろう?」
(´<_` )「そう思うよ、兄さん」
( ´_ゝ`)「だよなぁ!またお兄ちゃんポイントが増えてしまったな!」
(´・ω・`)「そう、かなぁ……?」
( ^ω^)「思い出した!流石くんだお!」
(´・ω・`)「いったいなんですか?首からぶら下げてる、そのごっつい機械?」
( ^ω^)「高そうな機械だお?」
( ´_ゝ`)「ふっふーん、秘密事項だ!情報とはタダではないからな!」
(´<_` )「兄さん、教えてあげてもいいのでは?
イタズラは好きだが、イジワルは好きじゃないぞ」
( ´_ゝ`)「教えてやろう!何故ならば、俺は優しいからな!」
( ´_ゝ`)「これはポラロイドカメラ!
撮ったらすぐ写真が出てくる、夢のような機械だ!」
(´・ω・`)「んんん……?」
( ´_ゝ`)「これさえあれば学校新聞が作りやすくなるに違いないぞ!
俺等は新聞部の最終兵器というわけだ!」
( ´_ゝ`)「父者に買って買ってもらったんだよなー?」
(´<_` )「なー」
.
13:名無しさん:2023/10/08(日) 19:50:59 ID:lrpTdIvI0
( ^ω^)「流石くんのお父さんは社長なんだお!」
(´・ω・`)「すごいや、オンゾウシってやつだね!」
( ´_ゝ`)「んー?なにか言ったか俺等より豪邸に住んでる諸本くーん?」
(´<_` )「兄さん、イジワルしてるのか?」
( ´_ゝ`)「いやあ諸本くんちは素敵な家だよなー!
なんせこの町の偉い人だもんなー!はっはっはー!」
(´・ω・`)「な、なに」
( ^ω^)「気にしないでいいお、いつもこうなんだお」
( ´_ゝ`)「さっきの写真は記念にくれてやろう!
何故ならば!俺は優しいお兄ちゃんだからな!」
(´<_` )「兄さん、優しい」
( ´_ゝ`)「ふっ。またお兄ちゃんポイントが増えてしまったか」
( ^ω^)「おお!僕と諸本くんが写ってるお!」
【 (;うω・`)(>ω< ) 】
( ^ω^)「くくく!諸本くんの顔おもろいお!」
(´・ω・`)「ふふっ、そう?君の顔も笑えるよ!」
( ´_ゝ`)「写真のお礼か?そんなもの結構だ!
なんせ金なら腐るほど持ってるからな!」
(´<_` )「な!」
(;´・ω・`)「ありが……いやいや、勝手に人のこと撮ったらダメですからねっ!?」
( ´_ゝ`)「んー?なにを言う、撮られておくが吉だぞ?
俺等は未来で大活躍する暁廟町の新聞記者様だからな!」
(´<_` )「兄さんの言うとおり」
( ´_ゝ`)「だよなぁ!」
.
14:名無しさん:2023/10/08(日) 19:51:36 ID:lrpTdIvI0
(´・ω・`)「さっき『被害者』って言いましたよね?
なにか事件でもあったんですか?」
( ´_ゝ`)「この暁廟町の人間ならば誰でも知ってるぞ。
決して誰もが口にはしないけれどもな」
(´<_` )
( ´_ゝ`)「特に俺等はこの事件について調べているんだ。
きっとこの町の誰よりも詳しい『第三者』だぞ」
(´<_` )
( ´_ゝ`)「とある男に子供達が誘拐された事件だ」
(´<_` )「とある社に数日間も監禁された事件だ」
(´・ω・`)「ちょ、ちょっと待てください」
(´・ω・`)「その被害者の中に、内藤くんもいたんですか?」
( ^ω^)
ξ ⊿ )ξ「待ちなさい!!」
( ´_ゝ`)「げ」(´<_` )
ξ゚⊿゚)ξ「アンタたち、またあの事件の話してるんじゃないでしょうね?
いつもいつもやめなさいって言ってるでしょ!」
ξ゚⊿゚)ξ「まったく!私がいないとすぐにこれなんだから!」
(´・ω・`)(あっ。噂をすれば『生徒会長ちゃん』)
ξ゚⊿゚)ξ「それに、そのカメラ!持ち込み届が出てないようだけど?
学校に関係のないものは生徒会が没収する決まりよ!」
( ´_ゝ`)「げげげ」(´<_` )
.
15:名無しさん:2023/10/08(日) 19:52:06 ID:lrpTdIvI0
( ´_ゝ`)「まいったな、あの女は金で釣れないぞ」
(´<_` )「天敵のおでましだ」
( ´_ゝ`)「金には困ってるはずなのに頑なな奴め」
(´<_` )「兄さん、どうする?」
( ´_ゝ`)「新聞部の腕章が生徒会の腕章に逆らえば、
一気に部活の予算を削られるぞ!」
(´<_` )「それは困る。自分のお金を出すと何故か先生に怒られてしまうからな」
( ´_ゝ`)「ここはひとまず退散しよう!それが兄として最善の選択だろう?」
(´<_` )「さすが兄さん」
( ´_ゝ`)「だよなぁ!」
( ´_ゝ`)「内藤くん」(´<_` )
( ^ω^)「?」
( ´_ゝ`)「なにか思い出したらよろしく!お礼はたんまりと払おう!」
(´<_` )「俺等は新聞部で待ってるぞ!」
( ´_ゝ`)「いまのキマってただろう?そうは思わないか?」
(´<_` )「兄さん、かっこいい。かっこいいから、はやく逃げよう」
( ´_ゝ`)「よしきた、逃げるぞ!」
ξ゚⊿゚)ξ「あっ、こら!待ちなさい!」
( ´_ゝ`)「さらばだ、独裁者ー!」
(´<_` )「独裁生徒会長ー!」
ξ#゚⊿゚)ξ「なんですってー!?止まりなさーい!カメラ没収するわよー!!」
.
16:名無しさん:2023/10/08(日) 19:52:39 ID:lrpTdIvI0
(;´・ω・`)「待って待って、怒らないでください、『生徒会長ちゃん』」
ξ#゚⊿゚)ξ「『都出さん』よ!!役職じゃなくって名前で呼んでくれないかしら?」
カサッ...
(´・ω・`)(なに?)
ξ゚⊿゚)ξ
(´・ω・`)(生徒会長ちゃんの髪に、なにかが)
(´・ω・`)(真っ赤な、なにかが、動いてる)
(´・ω・`)(髪かざり?ううん、違う)
カサカサ...
(´・ω・`)(蝶々……?)
ξ゚⊿゚)ξ「なに見てるのよ?言いたいことがあるなら、はっきりおっしゃいな?」
(;´・ω・`)「う、ううん!なんでもありません!!」
( ^ω^)「きっとツンちゃんが美人さんだから見惚れてたんだお!」
ξ*゚⊿゚)ξ「まあ!」
(;´・ω・`)「そんなんじゃないやい!!」
ξ゚⊿゚)ξ「なによ?失礼しちゃうわっ」
(;´・ω・`)「わわっ!そういう意味じゃないです!!」
(;´・ω・`)(あれ?)
(;´・ω・`)(虫どこ行ったんだろう?気のせいだったのかな?)
(;´・ω・`)(そうだよね、いるわけないよね、こんな真冬に虫なんて)
.
17:名無しさん:2023/10/08(日) 19:53:25 ID:lrpTdIvI0
( ^ω^)「おはよう、ツンちゃん!」
ξ゚⊿゚)ξ「おはようなら学校に来る途中でしたでしょ?」
( ^ω^)「ツンちゃん、怒ってる?」
ξ゚⊿゚)ξ「私?別に怒ってなんかないわ!まったく!これっぽっちも!」
ξ゚⊿゚)ξ「でも君はもっと怒るべきよ、ブーンくん!」
( ^ω^)「僕?」
ξ゚⊿゚)ξ「嫌でしょう?頭に来るでしょう?」
ξ゚⊿゚)ξ「とっくに昔の事件だのに、いつまでも『被害者』だなんて言われたら!」
( ^ω^)「でも間違ってないお。僕達はおんなじ『被害者』だお、
自分達でもそう言い合ってるお」
(´・ω・`)(僕達、被害者、事件……)
(´・ω・`)(分からない話だ。なんだか二人が遠くに感じるや)
キーンコーン
カーンコーン
( ^ω^)「あっ、予鈴」
ξ゚⊿゚)ξノ「席に戻らなくっちゃ。またあとでね、ブーンくん、諸本くん」
( ^ω^)ノシ「ツンちゃん、またあとで!」
(´・ω・`)"「う、うん。またね、生徒会長ちゃん」
(´・ω・`)「内藤くんって『都出さん』のこと『ツンちゃん』って呼ぶんだね」
( ^ω^)「昔っからそう呼んでるお!」
(´・ω・`)「へぇ。幼なじみなんだ、いいな」
.
18:名無しさん:2023/10/08(日) 19:54:08 ID:lrpTdIvI0
(´・ω・`)(ブーンくんに、ツンちゃんか、いい名前だね)
(´・ω・`)(僕もいっぺんでいいからあだ名が欲しいな。
自分で考えたこともあるけれど、やっぱり誰かにつけてもらいたい)
(´・ω・`)(それってすっごく、友達っぽいもん)
(´・ω・`)(あれ、でもおかしいな?幼なじみなのに、
内藤くんと都出さんの指に糸が見えたことないぞ?)
(´・ω・`)(いま僕に見えてないだけかな?うーん、他の人の糸は見えてるのに)
( ^ω^)「おーん?提出するプリントどこいったお?」
(´・ω・`)「忘れん坊くん!今日こそ宿題ちゃんと持ってきた?
忘れたりなんかしてみなよ、おっかない教育的指導室にさらわれちゃうぞ!」
( ^ω^)「あったお!ぬかりないお!」
( ^ω^)「諸本くんこそ、宿題やってきたかお?
転校生にはとっておきの宿題が出てるって先生が言ってたお」
(´・ω・`)「ああ、あれ。あれはね、転校生へのいじめに違いないよ……」
( ^ω^)「なにさせられたんだお?」
(´・ω・`)「第二少年少女学校の校歌と教訓の書き写しと暗記……」
( ^ω^)「おっおっ!僕達も初等部に入学のときやらされたらしいお!
あれを覚えるのは大変だったおね?」
(´・ω・`)「やっぱりこの学校おかしくない?」
(´・ω・`)「なんで校歌が三十二番もあるの?なんで教訓をぜんぶ覚えないといけないの?
これぜんぶ覚えたら人生でいいことあるかな?」
.
19:名無しさん:2023/10/08(日) 19:54:45 ID:lrpTdIvI0
( ^ω^)「中等部を卒業する頃には分かるようになるお!たぶん!」
(´・ω・`)「あと数ヶ月後ってこと?うへぇ、分かりたくないなー……」
( ^ω^)「分かんないけど、慣れてはくるお!」
(´・ω・`)「慣れたくも、ないなー……」
( ^ω^)「くっくっく!」
(´・ω・`)「なんだい、けったいな笑い方しちゃってさ」
(´・ω・`)「一時間目、歴史だっけ?」
( ^ω^)「教科書、教科書……」
コツンッ
( ^ω^)「?」
( ^ω^)(なんだろう、この感触)
( ^ω^)(筆箱でも教科書でもない。机の中にあるもの)
カタッ...
( ^ω^)(小さな、箱?)
グイッ...
( ^ω^)(開かないお)
ググッ...
( ^ω^)(やっぱり開かない。どうなってるんだお?)
( ^ω^)(それにこの箱、どっかで見たことがある気がするお)
.
20:名無しさん:2023/10/08(日) 19:55:12 ID:lrpTdIvI0
【こちらは始業の放送です】
【これより一時間目・二時間目の授業が始まります。生徒はテレビの画面から目を離さないでください】
【日直係は教卓の上に置いてあるテレビの電源を入れてください】
プツンッ...
ジジッ...
【('A`)】「三年生諸君、おはようございます」
「先生、おはようございます」
「先生、おはようございます」
「全員、起立」
「画面の中の先生に礼」
「全員、着席」
【('A`)】「三年生は理科の授業です。
教科書825ページを開いてください」
「先生、よろしくお願いします」
「先生、よろしくお願いします」
( ^ω^)「先生、よろしくお願いします」
(´・ω・`)「先生、よろしくお願いします」
ξ゚⊿゚)ξ「先生、よろしくお願いします」
キーンコーン
カーンコーン
「全員、起立」
「画面の中の先生に礼」
「全員、着席」
「先生、ありがとうございました」
「先生、ありがとうございました」
【こちらは終業の放送です】
【一時間目・二時間目の授業は終了になります。これより三十分の休憩時間に入ります】
【日直係は教卓の上に置いてあるテレビの電源を切ってください】
プツンッ...
.
21:名無しさん:2023/10/08(日) 19:55:40 ID:lrpTdIvI0
──休み時間
(´・ω・`)「わあ。これってカラクリ箱?」
( ^ω^)「諸本くんもこれ見たことあるのかお?」
(´・ω・`)「ない、けど。内藤くんは見たことあるの?」
ξ゚⊿゚)ξ「ずいぶんと古い木箱ね。生徒会に持ち込み届は出されてない物だわ」
(;´・ω・`)「わっ!いつのまに生徒会長ちゃん!」
ξ゚⊿゚)ξ「私がいたら悪いかしら、転校生くん?」モグモグ
(;´・ω・`)「そ、そんなわけないじゃないですか!」
(´・ω・`)「生徒会に持ち込み届が出てない、って?
もしかしてぜんぶ覚えてるんですか?」
ξ゚⊿゚)ξ「当たり前でしょ?生徒会長はみんなの期待されてるの、
それくらいは出来なくっちゃね!」モグモグ
ξ゚⊿゚)ξ モグモグ
(´・ω・`)「あのう、なにか食べてます?」
ξ゚⊿゚)ξ「なんにも食べてないわ」モグモグ
(´・ω・`)「学校でおやつ食べたら先生に叱られちゃう……」
ξ゚⊿゚)ξ「食べてないわ」ゴクンッ
(´・ω・`)「えぇ……」
ヒソヒソ
コソコソ
(´・ω・`)(!)
(´・ω・`)(教室のあっちこっちから視線を感じる)
(´・ω・`)(見られてる)
.
22:名無しさん:2023/10/08(日) 19:56:20 ID:lrpTdIvI0
「『あの影くん』と『あの生徒会長ちゃん』はいつも一緒にいるね」
「どうして例の転校生まで一緒にいるんだろう」
(´・ω・`)
「例の転校生のお兄ちゃん知ってる?」
「知ってる知ってる。シャキン様でしょ、暁廟町の偉い人だよね」
「外の世界とはいえ、サイコがあんな事件を起こしてお可哀想に」
ヒソヒソ
コソコソ
(´ ω `)(傷ついちゃだめだ)カタ
(´ ω `)(傷ついちゃだめだ傷ついちゃだめだ傷ついちゃだめだ傷ついちゃだめだ傷ついちゃだめだ
傷ついちゃだめだ傷ついちゃだめだ傷ついちゃだめだ傷ついちゃだめだ)カタカタ
グイッ
( ^ω^)っ「諸本くん、どうしたんだお?」
(´・ω・`)「い゛だっ!?」
(´・ω・`)「あっ、僕……」
ξ゚⊿゚)ξ「気にしなくていいわよ、諸本くん」
ξ゚⊿゚)ξ「私達三人が集まってるだけで、他の人らには何故だか面白いみたい。
ようするに、ただの暇人なのよ」
ξ゚⊿゚)ξ「アンタは暇人じゃないでしょ?
暇とは言わせないわ、私達とお話ししてるんだから!」
(´・ω・`)「は、はい……」
.
23:名無しさん:2023/10/08(日) 19:56:52 ID:lrpTdIvI0
( ^ω^)「この箱、机の中に入ってたんだお!僕のじゃないんお!」
(´・ω・`)「どっかの誰かさんが間違えて入れたとか?」
ξ゚⊿゚)ξ「ブーンくんへの贈り物かもしれないわよ?」
カラカラ
カラカラ
( ^ω^)「振ると音がするお!中身はなんだろう?」
( ^ω^)「へその緒とか、抜けた子供の歯とか?」
(´・ω・`)「僕なら絆創膏とかお薬を入れるかな?」
ξ゚⊿゚)ξ「私はリボンを……と言いたいところだけど、
アクセサリー入れってかんじではないわよね」
( ^ω^)「うーん?この古くてちっちゃい木の箱、
どっかで見たことあるような気がするお」
ξ゚⊿゚)ξ「奇遇ね、私もよ。どこだったかしら?」
(´・ω・`)「僕なんだか怖くなってきちゃったよ。開けるのやめにしない?」
( ^ω^)「確認してみるお!ツンちゃん、これ開けても大丈夫かお?」
ξ゚⊿゚)ξ「大丈夫、だと思うわ」
(´・ω・`)「えっ、なに確認それ?」
(´・ω・`)(うーん、生徒会長ちゃんが大丈夫って言うなら、大丈夫なのかなぁ?)
ξ゚⊿゚)ξ「どうしたの?開けてみせてちょうだいよ」
( ^ω^)「引っ張ってるけど開かないんだお!」
(´・ω・`)「待って待って!内藤くん、こいつはカラクリ箱だよ」
( ^ω^)「カラクリ箱?」
.
24:名無しさん:2023/10/08(日) 19:57:32 ID:lrpTdIvI0
(´・ω・`)「えっと、知恵の輪……というか、知恵の箱だね。
順番どおりに操作しないと開かないようになってるんだよ」
(´・ω・`)「この箱の小ささなら難しくはなさそうだけど」
( ^ω^)「うーん、やっぱり開かないお。
はい、次、諸本くんの番だお!」
(;´・ω・`)「僕もこういうパズルみたいなもんはお手上げだよ!」
ξ゚⊿゚)ξ「任せてちょうだい」
(;´・ω・`)「お願いします、頼りになります!」
( ^ω^)「ツンちゃんにしか出来ないお!」
ξ*゚⊿゚)ξ「ふんっ、しょうがないからやってあげてるだけなんだからね!
みんなして、私がいないとなーんにも出来ないんだから!」ガチャガチャ
( ^ω^)「ああ言ってるけど、ツンちゃんは人に頼られると嬉しいんだお」
(´・ω・`)「ありがたいや」
カタカタ
カタカタ
ξ゚⊿゚)ξ「えっとぉ、ここがこうで、こうして……」
( ^ω^)「ツンちゃんでも出来ないことがあるんだおね。選手交代するお?」
ξ゚⊿゚)ξ「むっ……!やだ……。もうちょっと……やる……」
(;´・ω・`)「ああっ!その言い方は逆効果だよ、内藤くん」
.
25:名無しさん:2023/10/08(日) 19:58:24 ID:lrpTdIvI0
カタカタ
カタカタ
ξ゚⊿゚)ξ「もうちょっとなのに……」
(´・ω・`)「内藤くん、机の中にあったのは箱だけ?」
( ^ω^)「探してみるお!」
ガサゴソ
ガサゴソ
( ^ω^)「おっ?奥の方になんかあったお!」
カサッ...
( ^ω^)「紙?」
(´・ω・`)「これまたずいぶんと古い紙だね。なんて書いてあるのかな?」
( ^ω^)「えっとね……」
【 我奇ノ杜事件は 終わっていない 】
.
26:名無しさん:2023/10/08(日) 19:59:07 ID:lrpTdIvI0
( ^ω^)「えっ?」
(´・ω・`)「ガキノモリ……?」
(´・ω・`)「なにこれ、いたずら?」
ξ;゚⊿゚)ξ「……あっ!」
カタンッ
ξ;゚⊿゚)ξ「箱の仕掛け、解けちゃった……」
( ^ω^)「…………」
(;´・ω・`)「…………」
( ^ω^)「どうする?開ける?やめておく?」
ξ;゚⊿゚)ξ「開けrやめる!!」(´・ω・`;)
( ^ω^)「どっち?」
ξ;゚⊿゚)ξ「なんでいまさらやめるのよ!?諸本くんのいくじなし!」
(;´・ω・`)「ひぇっ!!ごめんなさーい!!」
ξ;゚⊿゚)ξ「とりあえず、これ!ブーンくんに返しておくからね!」
( ^ω^)「おん?」
トンッ
ξ;゚⊿゚)ξ「あっ!」
( ^ω^)「あっ」
( ^ω^)(手が、滑って)
( ^ω^)(箱が)
( ^ω^)(落ちていく)
.
27:名無しさん:2023/10/08(日) 19:59:29 ID:lrpTdIvI0
カツンッ‼︎
( ^ω^)「…………」
(;´・ω・`)「…………」
ξ;゚⊿゚)ξ「…………」
( ^ω^)「ごめんお?」
ξ;゚⊿゚)ξ「ばかぁ!!」
(;´・ω・`)「ねぇ……」
(;´・ω・`)「箱のフタが開いてる……」
コロコロ...
( ^ω^)「中からなんか転がってきたお?」
ξ;゚⊿゚)ξ「よしなさいよ、そんなもん拾わない方がっ」
( ^ω^)「これって……」
(;´・ω・`)「僕にもちょっと見せて」
( ^ω^)「……花びら?」
(;´・ω・`)「それにしては硬そうじゃない、かな?
僕にはウロコとか貝がらみたいに見えるけど……」
( ^ω^)「確かに硬いお。色もばっちぃ」
ξ;゚⊿゚)ξ「あんまり触らない方がいいわよ……。
なんだかそれ、嫌なかんじする……」
(;´・ω・`)「ひっ……!おっかないこと言わないでくださいよ……」
.
28:名無しさん:2023/10/08(日) 20:00:08 ID:lrpTdIvI0
( ^ω^)「ツンちゃん、知ってるのかお?」
ξ;゚⊿゚)ξ「ううん。ただ……嫌だと思っただけ」
( ^ω^)「この箱、どうする?」
(;´・ω・`)「焼却炉で燃やして供養する、とか?」
ξ;゚⊿゚)ξ「燃やすなんていけないわ!呪われちゃったらどうするつもり?」
(;´・ω・`)「の、のろ?ただのイタズラじゃないんですか?」
ξ;゚⊿゚)ξ「有り得ないわ、そんなこと!」
ξ;゚⊿゚)ξ「『ガキノモリ事件』の名前を使ってイタズラだなんて!
暁廟町の人がそんなおっかない真似するわけないわ!」
(;´・ω・`)「?」
( ^ω^)「秘密基地に隠しておくお?」
(;´・ω・`)「秘密基地!?」
ξ゚⊿゚)ξ「いつもの場所ね、第三視聴覚室!」
(;´・ω・`)「ひぇっ!あのお化けが出るって噂の?」
( ^ω^)「大丈夫だお!お化けなんて出ないお!」
(;´・ω・`)「そんなのどうして分かるのさ?」
( ^ω^)「噂を流したのは僕だからだお!」
(;´・ω・`)「ええっ!?でもあの噂って、何十年も昔からあるんじゃ……?」
( ^ω^)「あれ?そうだったかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「教室じゃあ目立ってしょうがないもの!はやく行きましょ行きましょ!」
.
29:名無しさん:2023/10/08(日) 20:00:43 ID:lrpTdIvI0
ξ゚⊿゚)ξ「いつもどおり鍵は私に任せなさい!
学校の合鍵を任されてこその生徒会長よ!」チャリッ
( ^ω^)「さっすがツンちゃん!悪の才能があるお!」
ξ゚⊿゚)ξ「あら?友達の才能の間違いでしょ?」
( ^ω^)「諸本くん?どうしたんだお、はやくおいでお!」
(;´・ω・`)「い、いいのかなぁ……」
──第三視聴覚室
ξ゚⊿゚)ξ「ここなら誰にも邪魔されずにのんびり出来るわ」
(;´・ω・`)(もしも悪い子したのがバレて教育的指導室送りになったら、
お父さんとお母さんになんて言われるか……兄さんにどれほど迷惑がかかるか……)
(;´・ω・`)「やっぱり今からでも帰った方が……」
( ^ω^)「諸本くんも僕達の秘密基地の仲間入りだお!」
(*´・ω・`)「な、仲間……?」
(*´・ω・`)(秘密基地だなんて、すっごくそれっぽい!友達っぽい!)
( ^ω^)「僕達だけの秘密ってやつだおね!」
(*´・ω・`)「そっかぁ!えへへ!」
ξ゚⊿゚)ξ「さっきの箱と紙はこのロッカーにしまいましょ」
ガチャッ
ξ゚⊿゚)ξ「ここにしまって、なかったことにするの、いいわね?」
パタン...
.
30:名無しさん:2023/10/08(日) 20:01:14 ID:lrpTdIvI0
(´・ω・`)
(´・ω・`)
(´・ω・`)「『ガキノモリ事件は終わっていない』」
( ^ω^)
ξ゚⊿゚)ξ
(´・ω・`)「さっきの紙に書いてあったやつ、どういう意味だろう?」
( ^ω^)「ガキノモリじゃないお、我奇ノ杜(わたくしのもり)だお」
(´・ω・`)「そんなの読めっこないよ……」
( ^ω^)「みんな『ガキノモリ』って呼んでるお」
(´・ω・`)「やっぱり?」
(´・ω・`)「その『ガキノモリ事件』が、なに……」
( ^ω^)
(´・ω・`)「……待って」
(;´・ω・`)「まさか……」
(;´・ω・`)「内藤くんが『被害者』になった事件の名前って……」
( ω )
( ω )
( ω )「ガキノモリ事件だお」
( ω )「犯人はまだ捕まってないんだお」
.
31:名無しさん:2023/10/08(日) 20:02:11 ID:lrpTdIvI0
「告白します」
「僕はあの事件の被害者です」
「数年前、僕達は知らない人に誘拐されました」
「そしてとある社に、数日間監禁されました」
「見つかったとき、僕達は抱き合うようにして眠っていた、そうです」
「よく、覚えていません。僕達には事件の記憶があまりありません」
「けれども、聞いてください」
「僕達は弱っていたけれども、傷ついていたけれども、こうして生きています」
「聞いてください。犯人はまだ捕まってません」
「どうかこのまま、あの人を探さないであげてください」
「それが僕達の」
「『被害者』の願いです」
( ^ω^)「警察の人にも、新聞記者の人にも、クラスの人にも、
先生にも、お父さんにも、お母さんにも。
誰になにを言われても、僕達はこれしか言わなかったお」
( ^ω^)「本当に、本当に、なんにも覚えてないんだお」
(´・ω・`)「そんな……」
(´・ω・`)「信じられないよ、君にそんなにひどいことがあっただなんて……」
(´・ω・`)(こんなとき、なんて言ったらいいか、分からないけど……)
(´・ω・`)「あのね、内藤くん!」
(´・ω・`)「内藤くんが生きててくれて、僕にはそれが、なにより嬉しいよ!!」
( ^ω^)「ありがとうだお、友達!」
(´・ω・`)「ふふっ、友達だからね!」
.
32:名無しさん:2023/10/08(日) 20:02:43 ID:lrpTdIvI0
(´・ω・`)(でも、どうしても気になってしまう)
(´・ω・`)(『どうかこのまま、あの人を探さないであげてください』?)
(´・ω・`)(……どうしてそんなこと言ったんだろう?)
(´・ω・`)「ねえ。その文章って誰が考えたの?」
( ^ω^)「それは……」
ズキンッ...
(;^ω^)「うっ……」
(;^ω^)「それ、は……」
ズキンッ
(;^ω^)「そう、言えって」
(;^ω^)「あのとき、誰かが……」
ズキンッ
(;^ω^)「誰、が……?」
(´・ω・`)「内藤くん?頭がどうかしたの?」
ズキンッ
ズキンッ
『────』
( ω )「いたっ……」
ズキンズキンズキンズキンズキンズキン
ズキンズキンズキンズキンズキンズキン
『──だ』
.
33:名無しさん:2023/10/08(日) 20:03:23 ID:lrpTdIvI0
( ω )「いたい、いたい、いたい、いたい、いたい」
ズキンズキンズキンズキンズキンズキン
ズキンズキンズキンズキンズキンズキン
(´・ω・`)「だ、大丈夫……?」
( ω )「いたい、いたい、いたい、いたい、いたい」
( ω )「いたい、いたい、いたい、いたい、いたい」
( ω )「いたい、いたい、いたい、いたい、いたい」
ズキンズキンズキンズキンズキンズキン
ズキンズキンズキンズキンズキンズキン
( )『卒業式を楽しみにしておくことだ』
ξ;゚⊿゚)ξ「ブーンくん!もういい!もういいわ!」
( ω )「う゛うっ……い゛た゛い……い゛た゛い゛……」
ξ;゚⊿゚)ξ「なんにも考えないで。ゆっくり息をしてちょうだい」
( ω )「うん……うん……」
ξ゚⊿゚)ξ「いつも言ってるでしょう?」
ξ-⊿-)ξ「思い出したくないことなんか、無理に思い出すことないのよ」
ξ-⊿-)ξ「怖い怖い事件のことなんて忘れてしまいなさい?」
( ω )「うん……うん……」
(´・ω・`)「内藤くん、大丈夫?」
( ω )
(´・ω・`)「ごめんね、僕のせいで……」
.
34:名無しさん:2023/10/08(日) 20:04:04 ID:lrpTdIvI0
( ω )
( ^ω^)「どうして諸本くんが謝るんだお?」
(;´・ω・`)「へっ?」ビクッ
(;´・ω・`)(びっくりしたぁ。さっきまで辛そうな顔してたのに、
いきなり、なんでもなかったみたいに戻るんだもの)ドキドキ
(;´・ω・`)(もう大丈夫そうでよかった……)
( ^ω^)「あの事件のこと思い出そうとすると、頭が痛くなっちゃうんだお。
いっぱい思い出そうとすると、いっぱい痛くなっちゃうんだお」
( ^ω^)「頭ん中に手を突っ込まれて、かき回されてるみたいに。
痛くて痛くて、どうしようもなくなっちゃうんだお」
( ^ω^)「それから、誰かの声が聞こえた」
(´・ω・`)「声?」
( ^ω^)「『卒業式を楽しみにしておけ』とかなんとか」
(´・ω・`)「なに?学校の先生?」
ξ゚⊿゚)ξ「諸本くん、そこまでよ!ブーンくんの頭がまたおかしくなっちゃう!」
(;´・ω・`)「ほったらかしにしたまんまでいいのかな……」
( ^ω^)「どういうことだお?」
(;´・ω・`)「だってだよ?ガキノモリ事件の犯人はまだ捕まってないんだよね?
僕にはよく分かんないけど……、
こんな手紙のイタズラをする人、この町にいないんだよね?」
(;´・ω・`)「じゃあ、このカラクリ箱を机の中に入れたのは、誰?」
ξ;゚⊿゚)ξ「そんな、それって!」
( ^ω^)「……犯人?」
.
35:名無しさん:2023/10/08(日) 20:04:43 ID:lrpTdIvI0
カタッ...
(;´・ω・`)「だ、誰!?」
ξ;゚⊿゚)ξ「どうしたの?」
(;´・ω・`)「気のせい、かな?いま扉の外に誰かいたような気が?」
ガラッ
ξ;゚⊿゚)ξ「……誰もいないじゃない」
( ^ω^)「ううん、気のせいじゃないお」
(;´・ω・`)「心当たりがあるの?」
( ^ω^)「いつものことだお、ときどき誰かに見られてるんだお。
あの事件が終わってから、ずっと、ずっと」
(;´・ω・`)「えっ……」
ξ゚⊿゚)ξ「この町の人にとって、ガキノモリ事件は特別なのよ」
ξ゚⊿゚)ξ「クラスの子らの反応を見たでしょう?
好きか嫌いかはともかく、私達は見られるものなのよ」
(;´・ω・`)「もし犯人に事件の記憶が戻らないか見張られてるとしたら……?」
(;´・ω・`)「だって内藤くん達、犯人の顔を見てるんだよね……!?」
( ^ω^)「僕達、ガキノモリ事件のこと思い出したら殺されるんだお?」
ξ;゚⊿゚)ξ「まさか!」
(;´・ω・`)「そ、そんなことさせやしないよ!だって僕達、友達だもん!!」
( ^ω^)「おっ」
ξ;゚⊿゚)ξ「ちょっと!なにするつもり!?」
.
36:名無しさん:2023/10/08(日) 20:05:36 ID:lrpTdIvI0
(;´・ω・`)「一緒に思い出そう!ガキノモリ事件のこと!!」
( ^ω^)「思い出す?」
(;´・ω・`)「警察に犯人のこと言いつけてやろうよ!それで全部おしまいさ!」
( ^ω^)「戦わなくっていいんだお?大人達はみんな、
ガキノモリ事件と向き合えって、戦えって言うんだお」
(;´・ω・`)「僕達はただの子供だよ!!
ヒーローなんかじゃないんだ!悪者と戦う力なんてありっこないよ!」
( ^ω^)「戦わなくて、いい……」
ξ゚⊿゚)ξ「そのとおりよ、悔しいけど。大人に任せた方がいいわ」
ξ゚⊿゚)ξ「そうよ!警察に言って、それが駄目ならお母さんに言って、
それも駄目なら先生に言えばいいわ!暁廟町ぜんぶに広めてやるんだから!」
(´・ω・`)「ど、どうかな、内藤くん?」
( ^ω^)「ガキノモリ事件を終わりにしたいお」
( ^ω^)「でも、なんか。僕の中でなんか、引っかかってるんだお」
(´・ω・`)「しょうがないことだよ。辛いこと思い出すのは怖いもん」
ξ゚⊿゚)ξ「ガキノモリ事件のことを思い出すのは、ちょっとずつにしましょ。
みんなの心が壊れちゃったら、元も子もないんだから!」
.
37:名無しさん:2023/10/08(日) 20:06:02 ID:lrpTdIvI0
──給食
キーンコーン
カーンコーン
( ^ω^)「お腹減ったおー!諸本くん、机くっつけようおー!」
(´・ω・`)「えっ?でも、いいの?」
( ^ω^)「?」
(´・ω・`)「好きな人と机くっつけて食べていいんだよ?
僕と食べたら二人っきりになっちゃうよ?」
( ^ω^)「なーんにも問題ないおー!机くっつけるおー!」ゴトゴト
(*´・ω・`)「そ、そう?」
ξ゚⊿゚)ξ「そうよ!問題ないわ!」ガッチョン‼︎
(;´・ω・`)「うわっ!びっくりした!生徒会長ちゃん!?」
ξ゚⊿゚)ξ「都出さんよ!二人っきりから三人っきりになるけどいいわよね?」
(´・ω・`)「もちろん、だけど。他の友達は大丈夫?」
ξ゚⊿゚)ξ「そんなのいないわ」
( ^ω^)「僕もいないお!」
(´・ω・`)「えっ?」
ξ゚⊿゚)ξ「ガキノモリ事件の関係者はみんなこうなる宿命なのよ」
( ^ω^)「これまではツンちゃんと二人っきりだったんだお!
これからは三人っきりだおね!」
(*´・ω・`)「えへへ。いいね、三人っきり」
(´・ω・`)(……?)
(´・ω・`)(いま、なんて言った?)
.
38:名無しさん:2023/10/08(日) 20:06:27 ID:lrpTdIvI0
(´・ω・`)「生徒会長ちゃんってガキノモリ事件の関係者なんですか?」
ξ゚⊿゚)ξ「シィー、静かに。放送が始まるわ」
【こちらは給食の放送です】
【これより一斉給食が始まります。生徒はテレビの画面から目を離さないでください】
【日直係は教卓の上に置いてあるテレビの電源を入れてください】
プツンッ...
ジジッ...
【('A`)】「それでは、生徒諸君。両手を合わせてください」
「先生、いただきます」
「先生、いただきます」
( ^ω^)「先生、いただきます」
ξ゚⊿゚)ξ「先生、いただきます」
(´・ω・`)「先生、いただきます」
( ^ω^)「すっごく美味しそうだおー!」
(´・ω・`)「僕、教室で食べるごはん初めてだよ」モグッ
(´・ω・`)「……」モグモグ
ξ゚⊿゚)ξ「お味はいかが?」
(´・ω・`)「!?」ゴクンッ
(´・ω・`)「あっ!えっ?ええと、うんと……とっても美味いです!」
ξ゚⊿゚)ξ「外の世界の給食っておんなじかんじ?
私達この暁廟町から出たことないから知らないのよ」
.
39:名無しさん:2023/10/08(日) 20:07:00 ID:lrpTdIvI0
(´・ω・`)「もうちょっと量も種類も多いですね。あっ、でも、
僕がいた学校よりも、この学校は人数がずっと多いから、かもです!」
(´・ω・`)(ほんとのこと言っちゃ悪いよね。暁廟町の食べ物は薄くって味がしないだなんて)
( ^ω^) チャラ...
(´・ω・`)「!」
(´・ω・`)(内藤くん、ペンダントなんてつけてたんだ)
(´・ω・`)(ペンダントの飾りに白い粉が入った小瓶がぶら下がってる。
チェーンには紫のリボンが巻いてあっておしゃれだ)
( ^ω^) パラッ...
(´・ω・`)「なにそれ?」
( ^ω^)「お清めの塩!食事には絶対に一振りしないといけないんだお!」
(´・ω・`)「そんなことして大丈夫?もしも先生に見つかりでもしたら……」
ξ゚⊿゚)ξ「ブーンくんが子供の頃からやってることだもの。
ちゃんと先生に持ち物の届け出してるわよね?」
( ^ω^)「おーん?たぶん?」モグモグ
ξ゚⊿゚)ξ「アンタのハーネスにぶら下げてるソレも、学校に許可されたでしょ?」
(´・ω・`)「あっ、はい……」カランッ
(´・ω・`)「この学校って変わってますよね。
僕以外にも変わった物を持ち歩いてる人というか、ちょっぴり変わってる人がいっぱいです」
(´・ω・`)(三つ並んだ小さな管をベルトにつけている人、体中に黒い文字が書いてある人、
歯車やパイプがついた機械のゴーグルで目を隠してる人、
真っ黒な学校の制服を真っ赤に改造してる人、他にもたくさん)
ξ゚⊿゚)ξ「諸本くん、本当になんにも知らずにこの町に来ちゃったのね」
ξ゚⊿゚)ξ ポタッ
(´・ω・`)(生徒会長ちゃんがポーチから出した小瓶の中身をごはんにかけてる)
(´・ω・`)(内藤くんはお塩、生徒会長ちゃんはタバスコかな?)
.
40:名無しさん:2023/10/08(日) 20:07:30 ID:lrpTdIvI0
「先生、ごちそうさまでした」
「先生、ごちそうさまでした」
【こちらは終業の放送です】
【一斉給食の時間は終了になります。これより四十分の休憩時間に入ります】
【日直係は教卓の上に置いてあるテレビの電源を切ってください】
プツンッ...
──お昼休み
「号外だぞー!号外だぞー!」
「号外だよー!号外だよー!」
バサバサッ
バサバサッ
(´・ω・`)「わあ……!これが第二少年少女学校名物、号外新聞の雨霰(あめあられ)だね」
( ^ω^)「新聞部の仕業だお!何日かおきに学校の屋上とか
ベランダとかから、学校新聞バラ撒いてるんだお!」
「号外だぞー!号外だぞー!」
「号外だよー!号外だよー!」
バサバサッ
バサバサッ
( ^ω^)「号外だおー!号外だおー!」パシッ
(´・ω・`)「わっ!ナイスキャッチ!」
(´・ω・`)「秘書くん、今日の学校新聞はなにかな?」
( ^ω^)「はい、先生!『悲報!学校の増築工事、三年目に突入!!』
『あわや誘拐事件!?ユメミメル会による強引な生徒の勧誘!!』
『なんと!?理科室の骨格標本、本物の人間の骨だった!!』
『歪んだ愛の方程式?(笑)ハレンチ数学教師、学校追放!!』ですお!」
.
41:名無しさん:2023/10/08(日) 20:08:04 ID:lrpTdIvI0
(;´・ω・`)「えっ。いつもこんなかんじなの?」
( ^ω^)「いつもこんなかんじだお」
(;´・ω・`)「よく先生が許してくれてるね?」
( ^ω^)「そろそろ新聞部が生徒会に見つかって追っかけ回される頃だお」
「新聞部ー!!またアンタ達ねー!!」
「見つかったぞー!!」
「撤収ー!撤収ー!約束の場所で落ち合おうー!!」
「散り散りになって逃げるぞ!流石な提案だよな?」
(;´・ω・`)「いつもこんなかんじなの?」
( ^ω^)「いつもこんなかんじだお」
(;´・ω・`)「ひえぇ、修羅だねぇ」
(´・ω・`)「そういえば生徒会長ちゃんは?」
( ^ω^)「さっき新聞部を追いかけてたお」
(;´・ω・`)「あれ生徒会長ちゃんだったの!?お昼休みなのにご苦労様だよぉ」
(´・ω・`)「ガキノモリ事件のこと聞きにいくんだよね?
『流石くん』に聞いた方がいいんじゃないかな?」
( ^ω^)「さすがくん……?」
(´・ω・`)「ほら、この写真を撮ってった子」
【 (;うω・`)(>ω< ) 】
( ^ω^)「ああ!あの流石くん!
流石くんは新聞部だから、いまごろツンちゃんから逃げ回ってるお!」
(;´・ω・`)「あー!!そういえばさっき声した気が……」
( ^ω^)「ガキノモリ事件のことは『被害者』に聞いた方がはやいお!」
(´・ω・`)「えっ?本人に直接?」
.
42:名無しさん:2023/10/08(日) 20:08:30 ID:lrpTdIvI0
( ^ω^)「みんなに教えてあげなくっちゃ!
犯人のこと、箱のこと、手紙のこと!」
(´・ω・`)「信じてくれるかな?」
( ^ω^)「大丈夫だお!僕達はおんなじ『被害者』なんだから!」
(´・ω・`)「ふふ、羨ましいなぁ。よっぽど仲いいんだね」
( ^ω^)「とっても仲よしなんだお!」
(´・ω・`)「あの、ね、内藤くん。気になることがふたつ、あるんだけど」
( ^ω^)「なんだお?」
(´・ω・`)「内藤くん、大丈夫?」
( ^ω^)「おっ?元気だお?」
(´・ω・`)「そうじゃなくって。うん、でも、元気ならよかった」
(´・ω・`)「それから、大丈夫?その、関係ない僕なんかが、一緒にいて」
( ^ω^)「いいんだお!諸本くんは僕の友達なんだから!」
(*´・ω・`)「えへへ。僕、精一杯君の役に立つよ!」
(´・ω・`)「それでさ、これからどこにいくの?」
( ^ω^)「どこ行きたいお?
候補は中庭とー、保健室とー、屋上とー、図書室とー」
(´・ω・`)「えっとね、じゃあ、ここから近い中庭でいい?」
( ^ω^)「いいお!」
(´・ω・`)「これから会いにいくのはどんな子?」
( ^ω^)「中庭にガラスの庭園があるお?よくあの中でお茶してるんだお!」
.
43:名無しさん:2023/10/08(日) 20:09:01 ID:lrpTdIvI0
(´・ω・`)「わあ、頭がいい子なんだね!
確かにあの場所ならこの季節でもあったかいや」
( ^ω^)「冬なのにお花もいっぱい咲いてるんだお!
お外はこんなに寒いのにすごいおね!」
(´・ω・`)「その子、いい子?」
( ^ω^)「あの子?あの子はとっても賢くて、あれ?
優しくて?泣き虫で、アマノジャクで?」
(´・ω・`)「んんっ?どんな子?」
(´・ω・`)(『被害者』の子供達は暁廟町の有名人だ。
転校生の僕ですら、なんとなく顔を覚えてしまうくらい)
(´・ω・`)(あんまりにも噂されてるもんだから、誰だって覚えちゃうんだ)
(´・ω・`)(ちょっぴり本人が通りがかっただけで、囁き声があっちこっちから聞こえてくる)
(´・ω・`)(良い噂も、悪い噂も)
(;´・ω・`)「緊張してきちゃった……優しい子でありますように……」
( ^ω^)「いたいた、あそこ!ベンチに座って本を読んでる子!」
(;´・ω・`) ドキッ!!
( ^ω^)「おーい、おーい!ワカッテマスくーん!」
(´・ω・`)(『ワカッテマスくん』?)
(´・ω・`)(はて。その名前どっかで聞いたような?)
( <●><●>) ペラッ
(´・ω・`)(あっ、『優等生くん』だ)
(´・ω・`)(すっごく失礼だけど、一瞬、初等部の子かと思った。
背が小さくて、顔も幼くて、学ランもブカブカだったから)
.
44:名無しさん:2023/10/08(日) 20:09:41 ID:lrpTdIvI0
シュルッ...
( ^ω^)
( <●><●>)
(´・ω・`)(なに、これ……)
(´・ω・`)(内藤くんとワカッテマスくんを結んでる糸の形がおかしい)
(´・ω・`)(……ううん違う。あれは糸じゃない)
(´・ω・`)(こんなこと初めてだ)
(´・ω・`)(指と指がリボンで結んであるなんて)
( ^ω^)「ワカッテマスくんに聞きたいことがあるんだお!」
( <●><●>)b「シィー……」
( <●><●>)「読書中はお静かに」
(´・ω・`)(そういえば噂で聞いたっけ)
(´・ω・`)(『被害者の中にひとり、いつも本を読んでる子がいる』)
(´・ω・`)(『いつも本にはカバーがかかっていて、
なにを読んでるかは分からない』)
( <●><●>) ペラッ
(´・ω・`)(なんだって優等生くん、指に黄色いリボンつけてるんだろう?
一本のリボンを中指と薬指に巻きつけてるみたいだけど)
(´・ω・`)(あれは内藤くんの小指とつながってる白いリボンとは別、だよね?)
( ^ω^)「ワカッテマスくん、聞こえてるかお?」
( <●><●>)「やかましいですね。その顔とその声やめなさい」
.
45:名無しさん:2023/10/08(日) 20:11:23 ID:lrpTdIvI0
( <●><●>)「分かってるでしょう?私は読書を邪魔されるのがいっとう嫌いなんですよ」
(´・ω・`)(あれ?とっても仲よしなんじゃ?)
( ^ω^)「お話ししたいんだお!とっても大切なお話しなんだお!」
( <●><●>)「『お願いします、ワカッテマス様』」
(;´・ω・`)「えっ?」
( <●><●>)「言えないのですか?この私と話がしたいのでしょう?」
( <●><●>)「そのからっぽな頭を垂れて、汚らしい声を大にして、
惨めったらしく許しを請いなさい」
( ^ω^)「お願いします!ワカッテマス様!」
(;´・ω・`)「お、お願いします!ワカッテマス様!」
( <●><●>)「聞こえませんね、気持ちがこもってないのでは?
もう一度」
( ^ω^)「お願いします!ワカッテマス様!」
(;´・ω・`)「お願いします!!ワカッテマス様!!」
( <●><●>)「ふふんっ。まあ、いいでしょう」
( ^ω^)「今日は一人なのかお?『クルウちゃん』は?」
( <●><●>)「『クルウちゃん』」
( <●><●>)「ああ、あの人のことですか。
まったく肝心なときに限っていない、役立たず」
( <●><●>)「貴方が来ると知ってたら、お湯など汲みに行かせず、
追い返させていたのに残念です」
( ^ω^)「僕達は二人できたんだお!紹介するお、これ諸本くん!」
(;´・ω・`)「あっ、はじめまして!内藤くんの友達の諸本くんです!」
.
46:名無しさん:2023/10/08(日) 20:12:05 ID:lrpTdIvI0
( <●>) プイッ
(;´・ω・`)(む、無視された!?)
( <●><●>)「いつも言ってるでしょう、学校では話しかけるなと。
関係ない子まで連れてくるなんて。嫌がらせでしょうか?」
( <●><●>)「私なにかしましたか?貴方に嫌われるようなことしましたか?」
( ^ω^)「そんなことないお!ワカッテマスくんは大切な友達だお!」
( <●><●>)「おお、おぞましい」
( <●><●>)「それで話はおしまいですか?
まったくつまらない用事でしたね」
( <●><●>)「さようなら、内藤くん。お話し出来て嬉しくなかったですよ」
( ^ω^)「ブーンくんだお!」
( <●><●>)「どちらの呼び方でもどうせ貴方でしょう」
( ^ω^)「ワカッテマスくんにお話し聞かせてもらいに来たんだお!」
( <●><●>)「尊く貴重な私の時間を使って話しかけてるんです、
さぞかしよっぽどの用事なんでしょうね?そうでないと許されませんよ?」
( ^ω^)「僕達『ガキノモリ事件』の犯人を見つけたいんだお!」
( <●><●>)
( <●><●>)「……笑えないのは顔だけにしてください」
( ^ω^)「ワカッテマスくん、事件のこと覚えてるかお?」
( <●><●>)「知りません」
( <●><●>)「覚えてません」
(;´・ω・`)「お願いします!どんなことでもいいんです!」
.
47:名無しさん:2023/10/08(日) 20:12:38 ID:lrpTdIvI0
( <●><●>)「転校生くん、貴方が口をきくのは許可してませんよ」
(;´・ω・`) ヒュッ
( <●><●>)「私はあの事件のことを聞かれるのがいっとう嫌いなんですよ」
( ^ω^)「大変なんだお!箱が届いたんだお!」
( <●><●>)「はあ、脳の足りない人間の言葉は理解不能です」
(;´・ω・`)「あの!事件じゃないことなら聞いてもいいですか?」
( <●><●>)「貴方は許可しないと言って……」
(´・ω・`)「『告白します』
(´・ω・`)「『僕達はあの事件の被害者です』」
( <●><●>)
(´・ω・`)「この文章を考えたのは君ですか?」
( < >< >)
( < >< >)
( < >< >)「知りません」
( < >< >)「私ではありません」
(´・ω・`)「誰から聞いたか覚えてますか?」
( < >< >)「いやです」
( < >< >)「知りません」
( < >< >)「覚えてません」
( < >< >)「分かりません」
( < >< >)「貴方がいなくならないなら、もういい」
( < >< >)「私がここからいなくなります」
.
48:名無しさん:2023/10/08(日) 20:15:12 ID:lrpTdIvI0
( ^ω^)「待ってお!」
( ^ω^)っ「ガキノモリ事件はまだ、終わってないんだお!」
ガシッ!!
(。< >< >)「触るなあっ!!!」
(;^ω^)っ「あっ……」
(。< >< >) ポロポロ
(。< >< >)「うっ……ううっ……」
( ^ω^)「もう触らないお!
痛いことしないお!泣かないでお!」
(。< >< >)「……っく、ほんとですか?」
( ^ω^)「嘘なんかつかないお!」
(;´・ω・`)(びっくりした……)
(;´・ω・`)(内藤くんはちょっと腕を掴んだだけなのに。
嗚咽が止まらなくなるくらい泣いちゃうなんて」
(。< >< >)「ひっく……」
(;´・ω・`)(だ、大丈夫かな?)
( <●><●>)「『内藤くん』」
(;´・ω・`)(へ?)
(;´・ω・`)(さっきまで泣いてたはずなのに。
なんで、そんな、まるでなにもなかったみたいに)
( <●><●>)「次に学校で話しかけて来たときは、覚悟しておいてください。
分かってるでしょう、貴方こと大嫌いになりますから」
.
49:名無しさん:2023/10/08(日) 20:16:35 ID:lrpTdIvI0
( ^ω^)「あっ……」
(´・ω・`)「いっちゃった……」
(´・ω・`)(さっきのはなんだったんだろう?ウソ泣きには見えなかったけど)
──放課後
ザワザワ
ザワザワ
「門限までどっか遊びいく?」
「ごめーん。今日はお迎えの日だから帰らなくっちゃー」
「うちも家のお手伝いがあるからまた今度ね」
「っしゃ!新しいブロマイド買えた!」
「誰が出た?被ってたら交換しようぜ」
「お前ら運いいよな、俺いつも売り切れだよ」
ザワザワ
ザワザワ
(´・ω・`)「『ワカッテマスくん』って、いつもあんなかんじなの?」
( ^ω^)「あんなかんじだお。いつも嫌われちゃうんだお」
(´・ω・`)「僕、ちょっとあの子怖いかも」
( ^ω^)「昔はああいうかんじじゃなかったはずだお」
(´・ω・`)Φ カリカリ
( ^ω^)「なに書いてるんだお?」
(´・ω・`)Φ「表紙に書いてあるとおり、極秘ノートだよ!」
【 極秘ガキノモリ事件
(僕達意外立入禁止!!) 】
.
50:名無しさん:2023/10/08(日) 20:17:28 ID:lrpTdIvI0
( ^ω^)「おお……」
(´・ω・`)Φ「ガキノモリ事件のことと、『被害者』のみんなを、ノートにまとめていくんだ」
───────────────
【被害者】
( <●><●>) 優等生くん
名前:ワカッテマスくん
糸:内藤くんと白のリボンで結ばれている
備考:中指と薬指に黄色のリボンを結んでいる
証言:覚えてないみたい
───────────────
( ^ω^)「この似顔絵、諸本くんが書いたんだお?とっても上手だお!」
(´・ω・`)「えへへ、そんなことないよ」
( ^ω^)「僕とワカッテマスくん、白いリボンで結ばれてるのかお?」
(´・ω・`)「そうなんだよ、こんなの初めて見た」
( ^ω^)「どういう意味なんだお?」
(´・ω・`)「ごめんね。さっぱり分からないや」
(´・ω・`)(普通じゃない関係だってのは間違いない、と思うけど……)
(´・ω・`)(やっぱりおんなじ事件の『被害者』だからかなぁ?)
(´・ω・`)「優等生くんからこれ以上話を聞くのは難しいかな?」
( ^ω^)「次は別の『被害者』の子にしようお!」
(´・ω・`)「そうだね、放課後の調査に行こっか!」
( ^ω^)「ごめんお、放課後はちょっと。
帰ってお手伝いしないといけないんだお」
.
51:名無しさん:2023/10/08(日) 20:18:01 ID:lrpTdIvI0
(´・ω・`)「そいつは大変だね」
( ^ω^)「こればっかりはやらないといけないんだお」
(´・ω・`)「気にしないで。おうちの人の力になれて偉いなって思うよ」
爪 ー )y‐「なぁに面白いことやってるのぉ?」
ガシッ
( ^ω^)「おっ?」
(;´・ω・`)「ふあっ!?」
爪'ー`)y‐「俺様も混ぜてちょうだいよ、ブーンちゃん♪」
(;´・ω・`)(びっくりしたぁ!!
首絞められるかと思った!肩組まれただけだった!)
(´・ω・`)(すごく強い香水の匂い。誰だろう、このおっきくて綺麗な人?)
(´・ω・`)(上は学ランなのに、下は長いスカート履いてる。
あっ、スカートの下にズボン履いてるんだ)
(´・ω・`)(あれ?そういえば、この人どこかで?)
( ^ω^)「フォックスくん!」
(´・ω・`)「あっ!『アイドルくん』だ!」
シュルッ...
( ^ω^)
爪'ー`)y‐
(´・ω・`)(やっぱり内藤くんと白いリボンで結ばれてる)
(´・ω・`)(ワカッテマスくんといい、フォックスくんといい、
『被害者』はみんなそうなってるのかな?)
.
52:名無しさん:2023/10/08(日) 20:18:28 ID:lrpTdIvI0
爪'ー`)y‐「はぁい♪アイドルくんことフォックスくんで~す♪」
「あ~!アイドルくんだ~!かわいい~!」
「なんで『あのアイドルくん』がうちのクラスに来てるの?」
「今日も綺麗!今度髪のお手入れ教えてー!」
爪'ー`)y‐「喜んで~!また今度ねんっ♪」
( ^ω^)「フォックスくんは人気者なんだお!」
(´・ω・`)「すごいや。尊敬しちゃうなぁ」
( ^ω^)「いっつも一人でいるから、たぶん友達はいないんだお!」
(;´・ω・`)b「わー!わー!内藤くん、シィーッ!!」
爪'ー`)y‐
(´・ω・`)(男の人、かな?)
(´・ω・`)(お化粧してるし、髪の毛も長いけど。
でもガタイはいいし、声は低いよね?)
爪'ー`)y‐「なぁに?そんなに見つめて?
俺様に恋しちゃった?」ズイッ
(;´・ω・`)「ひゃい!?違います!!」
(;´・ω・`)(顔が近い近い近い!!)
爪'ー`)y‐「俺様は男よ。好きになるのは女の子♪
この格好は好きでしてるだけ。似合うでしょお?
いつか暁廟町を出て美容師になるのが夢だぜ!」
(;´・ω・`)「えっ?」
爪'ー`)y‐「はじめに言っておけばそう接してくれるだろ?」
爪'ー`)y‐「そういうお前さんはだぁれ?」
(;´・ω・`)「あっ、僕!内藤くんの友達の諸本です!
よろしくお願いします!」
.
53:名無しさん:2023/10/08(日) 20:18:48 ID:lrpTdIvI0
爪'ー`)y‐「あらあら、面白いことだぜ。
まさかブーンちゃんに友達が出来るとはなぁ」
爪'ー`)y‐「よろしくねぇ、ショボンちゃん♪」
(´・ω・`)「しょぼ?」
爪'ー`)y‐「俺様がいまつけたあだ名だぜ~!」
(*´・ω・`)「あだ名……?」
(*´・ω・`)(ショボン、ショボン、初めての僕のあだ名)
(*´・ω・`)(あだ名をくれたったことは、友達になれるかな……?)
爪'ー`)っ「ちょいと失礼っ」
(;´>ω<`)「ひっ!!」ビクッ
爪'ー`)っ「やっぱり~!せっかくいい顔してるのに、
ながーい前髪で顔隠しちゃあもったいないわよ~?」
(;´・ω・`)(髪の毛引っぱられるかと思った……)ドキドキ
爪'ー`)っ「こうやって前髪を横に流すと……ほぉら!イケメンの完成ー!」サッサッサッ
(;´・ω・`)「ひえぇ……」プルプル
( ^ω^)「フォックスくん、諸本くんが怖がってるお」
爪'ー`)y‐「ブーンちゃんもだぜ?前髪をちょっと上げてみたらどうかしら?!」
( ^ω^)「おーん?僕にはいらないお!」
爪'ー`)y‐「あら残念!似合うと思うんだけどね~?」
爪'ー`)y‐「そのおっかなびっくりなかんじ、
ショボンちゃんも『サイコ』でしょお?」
(;´・ω・`)「そ、そうです!双子の兄さんがいます、はい!」
爪'ー`)y‐「あらら?ショボンちゃんは双子の弟なのね?」
.
54:名無しさん:2023/10/08(日) 20:19:10 ID:lrpTdIvI0
爪'ー`)y‐「ほんじゃ、これ持って♡」
カサッ...
カサッ...
(;´・ω・`)「いいですけど、なんですか?このちっちゃい袋?」
爪'ー`)y‐「そのまま握り潰せ」
(;´・ω・`)「これでいい、かな?」
グチョッ
(;´・ω・`)(えっ……?なにか潰しちゃった?)
(;´・ω・`)(袋の中になにがあるのかは見えない)
(;´・ω・`)(でも、なにか)
(;´・ω・`)(生き物みたいな、感触だったような?)
爪'ー`)y‐「……よかった、お前さんは違うみたいね」
(;´・ω・`)「えっ?えっ?」
爪'ー`)y‐「なんでもないぜぇ?それ、返してちょおだい♪」
(;´・ω・`)(おまじないかなにかだったのかな?
結局、袋の中身はなんだったんだろう?)
爪'ー`)y‐「聞いたわよ、ブーンちゃん?
『ガキノモリ事件』のこと調べてるんだろ?」
( ^ω^)「そうなんだお。でもワカッテマスくんに嫌われちゃったんだお」
爪'ー`)y‐「ワカッテマスちゃん」
爪;'ー`)y‐「え゛っ?ワカッテマスちゃんに聞きに行ったのか?
よりにもよってはじめにワカッテマスちゃんに??」
( ^ω^)「まずかったお?」
(;´・ω・`)「『よりにもよって』??」
.
55:名無しさん:2023/10/08(日) 20:19:32 ID:lrpTdIvI0
爪*'ー`)y‐「……ぷっ!」
爪*'ー`)y‐「あーはっはっはっ!ブーンちゃんったらおかしな子!
あの泣き虫がおとなしく協力してくれるわけないでしょお?」
爪*'ー`)y‐「あー、おもしろい!けらけらけら!」
(;´・ω・`)「わ、笑わんでくださいよー!」
(;´・ω・`)「内藤くん、本当になんで、
はじめがワカッテマスくんだったの?」
( ^ω^)「諸本くんが中庭がいいって言ったんだお?」
(;´・ω・`)「止めてくれてもいいんだよ!?」
( ^ω^)「中庭なら二人いっぺんにお話し聞けると思ったんだお。
いつもワカッテマスくんとクルウちゃんは一緒にいるから」
(´・ω・`)(あの優等生くんが一緒にいる子?いったいどんな子なんだろう?)
爪'ー`)y‐「どうしていまさらガキノモリ事件なんか調べてるんだい?」
( ^ω^)「僕の机の中にこの箱と手紙が入ってたんだお」
爪'ー`)y‐「どれどれ~?」
(´・ω・`)「あの、これって犯人からですよね?」
爪 ー )y‐「……」
爪 ー )y‐「『ガキノモリ事件は終わっていない』……」
(´・ω・`)「大丈夫、ですか?」
爪;'ー`)y‐「な、なんてことないわ!ちょっとそう、びっくりしただけだぜ!」
( ^ω^)「これが箱だお」
爪;'ー`)y‐「うげぇ。きったねぇ箱!」
爪;'ー`)y‐「あら?この箱、どっかで見たことある、ような?」
.
56:名無しさん:2023/10/08(日) 20:19:53 ID:lrpTdIvI0
( ^ω^)「本当かお!?」
(´・ω・`)「思い出せそうですか?」
爪'ー`)y‐「どこだったかしら?すっげぇ昔だった気がする、けど……」
爪 ー )y‐「……うっ」
( ^ω^)「フォックスくん、無理しないでお」
爪 ー )y‐「ごめんなさい、ねぇ……?頭が……いてぇんだわ……」
(´・ω・`)(内藤くんとおんなじだ。
ガキノモリ事件のこと思い出すと、頭が痛くなっちゃうんだ)
( ^ω^)「よしよし、なんにも考えないで。ゆっくり息をしてお」
爪 ー )y‐「…………」
( ^ω^)「思い出したくないことなんか、
無理に思い出すことないんだお」
爪 ー )y‐「…………」
( ^ω^)「いまだけは怖い怖い事件のことなんて忘れるんだお」
爪 ー )y‐「…………」
爪 ー )y‐「…………」
爪'ー`)y‐「あは!ブーンちゃんが優しくって嬉しいわぁ♪」
爪'ー`)y‐「それで?箱の中身はなんだったんだ?」
コロコロッ
( ^ω^)「これだお!」
爪'ー`)y‐「これは……」
.
57:名無しさん:2023/10/08(日) 20:20:19 ID:lrpTdIvI0
( ^ω^)「たぶん花びらの化石だお!」
(´・ω・`)「あっ、僕は魚のウロコ!だと……思います……」
爪'ー`)y‐「…………」
( ^ω^)「なにか分かったのかお?」
爪'ー`)y‐「……知らない方がいい」
(´・ω・`)「分かったんですか?お願いです、教えてください!
( ^ω^)「知りたいお!フォックスくん!」
爪'ー`)y‐「……分かったわよ」
爪'ー`)y‐「落ち着いて聞いてちょおだいね?」
( ^ω^)「うん!」
(´・ω・`)
爪'ー`)y‐「これはな……」
爪'ー`)y‐「人間の生爪だ」
( ^ω^)「えっ」
(;´・ω・`)「!?」
.
58:名無しさん:2023/10/08(日) 20:20:54 ID:lrpTdIvI0
爪'ー`)y‐「いち、に、さん……ぜんぶで十枚。
おんなじ人の両手分かしらね?」
( ^ω^)「爪……?誰の爪……?」
(;´・ω・`)「じゃあ、この箱は……本当に……?」
爪'ー`)y‐「間違いないわね」
爪'ー`)y‐「ガキノモリ事件の犯人から、
俺達『被害者』への贈り物だ」
――昇降口
爪'ー`)y‐「それじゃあ、ブーンちゃん♪お手手つないで帰りましょっ」
( ^ω^)「諸本くん、また明日だお!」
爪'ー`)y‐「ショボンちゃん、まったねぇんっ♪」
(´・ω・`)「本当にもう帰っちゃうんですか?
そのう、ガキノモリ事件の調査は?」
爪'ー`)y‐「ごめんねぇ?俺様達はおうちの
お手伝いしなくっちゃいけないんだぜ」
( ^ω^)「おーん、僕もだお!放課後は無理だおね?」
爪'ー`)y‐「俺様がいなくて寂しくっても泣かないでちょおだいね~?」ズイッ
(;´・ω・`)「ひぃ!近い近い近い!」
爪'ー`)y‐「明日の昼休み、よろしく頼んだぜ♪」
(;´・ω・`)「あっ、はい!ありがとうございます!
一緒にガキノモリ事件を調べてくれて!」
爪'ー`)y‐「礼を言うのはこっちよ?これは俺様達の事件であって、
ショボンちゃんにはなーんにも関係ないんだからな!」
.
59:名無しさん:2023/10/08(日) 20:21:15 ID:lrpTdIvI0
(´・ω・`)「それは、そう、なんですけど」
(´・ω・`)(関係ない)ズキッ
(´・ω・`)(そうだった。内藤くんも、生徒会長ちゃんも、アイドルくんも、関係者なんだ)
(´・ω・`)(僕だけ、第三者だ)
( ^ω^)「もしもし?諸本くん?」
(´・ω・`)「あっ、なんでもないよ!」
(´・ω・`)「それより内藤くん、良かったね。
アイドルくんが家まで送ってくれるなら、百人力だよ!」
( ^ω^)「おん!」
(´・ω・`)「あのね、なるべく一人でいる時間を作らないでね?
いつどこで犯人が見てるかも分からないから」
( ^ω^)「ありがとうだお!諸本くんはおうちのお手伝い大丈夫かお?」
(´・ω・`)「おうちのことはお手伝いさんがやってくれるからなぁ。
僕は学校で問題さえ起こさなければいい、みたい」
(´・ω・`)「これから図書室で生徒会長ちゃんと待ち合わせしてるんだ。
なんでも、大切な話があるんだってさ」
( ^ω^)「またね、だお!」
(´・ω・`)「うん、また明日ね」
ガラガラ
ピシャン
.
60:名無しさん:2023/10/08(日) 20:21:45 ID:lrpTdIvI0
( ^ω^)「フォックスくんとふたりで帰るの久し振りだお!」
爪'ー`)y‐「ふたりっきりだなんて♡俺様、照れちまうわ♡」
( ^ω^)「えっ?なんで?」
爪'ー`)y‐「やぁだ、相っ変わらず冗談の通じない子ね~!」
( ^ω^)「おっ?」
爪'ー`)y‐「俺様、面白いこと思いついちゃった♪」
爪'ー`)y‐「これからは他の被害者の子も誘って、
毎日おうちまでみんな一緒に帰らない?」
( ^ω^)「それはいい考えだおね!」
爪'ー`)y‐「だろお~♪」
( ^ω^)「くくく!楽しみだお!」
爪'ー`)y‐「みんなの嫌がる顔が目に浮かぶぜ♪」
( ^ω^)「みんなと仲よしだおー!」
爪'ー`)y‐「…………」
爪'ー`)y‐「……ねぇ、ブーンちゃん」
爪'ー`)y‐「お前さんさ、本当にあの子らと
ガキノモリ事件のこと調べるつもり?」
( ^ω^)「おん?」
爪'ー`)y‐「もしも犯人が口を封じるために俺様達を狙ってるんなら、
ガキノモリ事件のこと調べてるブーンちゃんの『オトモダチ♡』も、
犯人に狙われちまうかもしれないだろ?」
( ^ω^)「あっ……」
爪'ー`)y‐「あんまり厳しいこと言いたくないけど……、
『第三者』は巻き込まない方がいいぜ?」
.
61:名無しさん:2023/10/08(日) 20:22:18 ID:lrpTdIvI0
( ^ω^)「でも諸本くんは友達だお」
爪'ー`)y‐「危ない目に遭うのも、嫌な思いするのも、
もう俺達だけで充分よ」
爪'ー`)y‐「ブーンちゃんだって、オトモダチを守りたいだろう?」
( ^ω^)「おん……」
爪'ー`)y‐「そんなに落ち込まないでちょおだい。
こっちまで悲しくなってきちまうわ~」
爪'ー`)y‐「オトモダチの代わりに、俺様が手伝ってあげるぜ!」
( ^ω^)「フォックスくんが?」
爪'ー`)y‐「そうよぉ♪かっこよくて美しーい
フォックス様がいれば、百人力でしょお?」
爪'ー`)y‐「それに俺様だってブーンちゃんとおんなじ『被害者』。
犯人の標的のひとりのはずでしょお?」
爪'ー`)y‐「俺様にお前さんを手伝わない理由がどこにある?」
( ^ω^)「ガキノモリ事件のお話し聞かせてくれるのかお?」
爪'ー`)y‐「ははんっ。それだけじゃないぜぇ~?
『被害者』のみんなから話を聞くのも手伝ってあ・げ・る♪」
爪'ー`)y‐「その代わり、俺様の番は最後ねっ♪
あれあんまり人に見られたくねぇのよ」
( ^ω^)「頼りになるお!フォックスくんがいれば、
『被害者』のみんなもお話ししてくれるはずだお!」
/ ,' 3「おお、おお……」
( ^ω^)「おっ?」
/ ,' 3「貴方様は『ワタクシノミコト様』の……」
.
62:名無しさん:2023/10/08(日) 20:22:39 ID:lrpTdIvI0
爪'ー`)y‐「こんにちは、おじいちゃん♪」
( ^ω^)「おっ?こんにちは!」
/ ,' 3人「ありがたや、ありがたや……」
( ^ω^)「行っちゃっていいのかお?
おじいちゃん、まだ土下座してるお」
爪'ー`)人「やぁねぇ、ブーンちゃん。
あれは土下座じゃなくって、俺様達を拝んでるんだぜ?」
( ^ω^)「どうして?」
爪'ー`)y‐「ガキノモリ事件の『被害者』がカミサマに愛された子供達だから」
──図書室
ガラガラ
ξ゚⊿゚)ξ「お待たせ!」
(´・ω・`)「あっ。お疲れ様です、生徒会長ちゃん」
ξ゚⊿゚)ξ「遅くなってごめんなさいね、生徒会の仕事が終わらなくて」
(;´・ω・`)「謝らないしないでください!待ってる間も楽しかったですよ!
そのう、友達と放課後に待ち合わせするの、初めてだったから……」
(´・ω・`)「生徒会の仕事、大変そうですね。
お昼休みも集まりありましたよね?」
ξ゚⊿゚)ξ「生徒会役員の引き継ぎよ、私達三年生はもう引退だから」
ξ゚⊿゚)ξ「最後の大仕事に、全二年生から
新しい生徒会長の選別をしてるってわけ」
(´・ω・`)「ええっ。そんなことまでしてるんですか?」
ξ゚⊿゚)ξ「学校の決定を生徒は断れないもの。
それに私、実はね、頼られるのは嫌じゃないの」
.
63:名無しさん:2023/10/08(日) 20:23:04 ID:lrpTdIvI0
(´・ω・`)「生徒会長ちゃんは高等部に上がっても生徒会に?」
ξ゚⊿゚)ξ「もちろんよ!みんな私がいなくちゃダメダメなんだから!」
(´・ω・`)「えへへ、違いないや」
ξ゚⊿゚)ξ「お昼休みはいけなくてごめんなさいね。
事件のことなにか分かったかしら?」
(´・ω・`)「それが、なんにも。僕にはよく分かんないけど、最初に
ワカッテマスくんに聞いたらいけなかったみたいです」
ξ゚⊿゚)ξ「まあ!ワカッテマスくんに?優しい子だったでしょ?」
(´・ω・`)「えっ」
(´・ω・`)「そう、なのかな?」
ξ゚⊿゚)ξ「あの子、泣き虫だから。仲良くしてあげてね?」
(´・ω・`)「あっ、うっ、努力はします……」
ξ゚⊿゚)ξ「?」
ξ゚⊿゚)ξ「ブーンくんはもう帰っちゃったのかしら?」
(´・ω・`)「うん。アイ……フォックスくんと一緒に帰りました」
ξ゚⊿゚)ξ「フォックスくんが?
珍しいお客さんね、ひとめ会いたかったわ」
(´・ω・`)「あの!そのことについて、言いにくいことが……
この箱について話さないといけないことがあるんです!」
ξ゚⊿゚)ξ「なにかしら?」
(´・ω・`)「実は──」
.
64:名無しさん:2023/10/08(日) 20:23:27 ID:lrpTdIvI0
ξ;゚⊿゚)ξ「箱の中身が人の爪……?」
(´・ω・`)「犯人からの贈り物に間違いない、って言ってました」
ξ;゚⊿゚)ξ「っ」
ξ;゚⊿゚)ξ「いったい、誰の……」
(´・ω・`)「僕に教えてください!ガキノモリ事件のこと!」
ξ゚⊿゚)ξ「そういえば転校生くん、なんにも知らないんだったわね」
(´・ω・`)「待ってる間に事件のこと聞き込みしたんですけど、
誰に聞いてもひとっつも教えてもらえなくて……」
ξ゚⊿゚)ξ「ばかね、流石くんが言ってたでしょう?
『暁廟町の人間ならば誰でも知ってる』
『けれども決して誰もが口にはしない』」
ξ゚⊿゚)ξ「それがガキノモリ事件よ」
ξ゚⊿゚)ξ「こっちへ来て、図書室の奥に案内するわ」
(´・ω・`)「えっ?奥があるんですか?」
ξ゚⊿゚)ξ「入れるわよ、私ならばね」
──図書歴史室
(´・ω・`)「わあ……」
ξ゚⊿゚)ξ「驚いたでしょ?この学校の図書室にはね、
暁廟町で起きた事件の新聞が残されてるのよ」
ξ゚⊿゚)ξ「事件のファイルが増えていくのに合わせて、
部屋の増築をし続けてるもんだから、
こんなにおかしな部屋の形になっちゃったの」
(´・ω・`)「すごいや……あちこちに通路と小部屋があって迷っちゃいそう……」
ξ゚⊿゚)ξ「その代わり、町から学校を大きくするお金を貰ってるんですって。
暁廟町には図書館がないから、
土日には一般の人も本の貸し出しか出来るのよ」
.
65:名無しさん:2023/10/08(日) 20:23:50 ID:lrpTdIvI0
(´・ω・`)「へぇ、そうなんですね。僕のいた学校ではそういうのなかったです」
ξ゚⊿゚)ξ「ふんっ、これだから都会っ子は!」
ξ゚⊿゚)ξ「諸本くん。事件のことを話す前に、
知っていて欲しいことがあるの」
ξ゚⊿゚)ξ「私達自身の話よ」
(´・ω・`)「?」
ξ゚⊿゚)ξ「だってアンタ、暁廟町についてなーんにも知らないんだもの!」
(;´・ω・`)「えっ?一応学校で教習は受けてきました!
ξ゚⊿゚)ξ「つまりアンタは『サイコ』ってわけね?
だからそんな適当な説明をされたのよ」
(´・ω・`)(また『サイコ』……)
(´・ω・`)(妹とか弟って意味なんだよね……?)
ξ゚⊿゚)ξ「諸本くんのお母さんは暁廟町の出身なのよね?」
(´・ω・`)「あっ、はい!母さんははいっぺんこの町を出たけど、
僕が……僕のせいで、二人でこの暁廟町に戻ってきたんです」
ξ゚⊿゚)ξ「おうちになにか変わったもの置いてない?」
ξ゚⊿゚)ξ「例えば、お札が貼られた立入禁止のお部屋とか。
例えば、触ってはいけないと言われてるものとか。
例えば、大切に大切に祭壇の上に置いてあるものとか」
(´・ω・`)「……っ!!」
(´・ω・`)「ご、ごめんなさい……誰にも言っちゃいけないんです……」
.
66:名無しさん:2023/10/08(日) 20:24:15 ID:lrpTdIvI0
ξ゚⊿゚)ξ「話を変えましょうか。おうちに約束事はない?」
ξ゚⊿゚)ξ「例えば、絶対にやらなくてはいけないことがあるとか。
例えば、絶対にやってはいけないことがあるとか」
ξ゚⊿゚)ξ「例えば、絶対に持ち歩かないといけない物がある、とか」
(´ ω `)「!!」
カタッ
(´ ω `)「ごめんなさい……」
カタカタ
(´ ω `)「お、お父さんとお母さんに叱られちゃうんです……」
カタカタ
カタカタ
(´ ω `)「今度、シャキン兄さんに、迷惑かけたら……」
(´ ω `)「僕……もう、あの家には…………」
ξ ⊿ )ξ バリッ
(。´・ω・`)「?」
(。´・ω・`)(なんの音?)
ξ゚⊿゚)ξ「うちには絶対に開けてはいけない、古くて大きな壺があるわ」
(´・ω・`)(生徒会長ちゃん?)
ξ゚⊿゚)ξ「その壺はね、絶対に開けてはいけないの、もう二度と」
(´・ω・`)(いったい、なにを食べて……?)
ξ゚⊿゚)ξ「何百年も前に作られた、何百枚ものお札が貼られた壺が封印されてる、
何千枚ものお札が貼られた扉と、何重もの壁に守られてるその部屋には」
(´・ω・`)(細くて長いなにかが生徒会長ちゃんの足を這っている)
.
67:名無しさん:2023/10/08(日) 20:24:38 ID:lrpTdIvI0
ξ゚⊿゚)ξ「その部屋にはね、だーれも入ってはいけないの。
都出家の者であってもね」
(´・ω・`)(虫だ)
ξ゚⊿゚)ξ バリッ
ξ゚⊿゚)ξ「都出家のご先祖様が扱っていた呪いは『蠱毒』」
(´・ω・`)「!?」
ξ゚⊿゚)ξ「知ってるかしら?様々な種類の虫を百匹、ひとつの壺の中に入れるの。
生き残った最後の虫が、最強の呪いを持つ『神の毒が宿る虫』となるのよ」
ξ゚⊿゚)ξ「長い長い年月をかけて、かなりやり方が変わってるけどね。
暁廟町に存在する呪いはだいたいそうじゃないかしら」
ξ゚⊿゚)ξ「この赤い虫たちは津出家の呪いが作り出してしまった毒虫達。
詳しくは言えないけれども……私は、私に集まってくるこの子達を食べなくてはいけないの」
(´・ω・`)「……」
ξ゚⊿゚)ξ「それぞれの家には呪いとの『制約』と『祝福』が存在するわ」
ξ゚⊿゚)ξ「津出家の制約は『絶対に壺を開けないこと』
その代わりに与えられた祝福は『どんな病にもかからない、
どんな毒にも耐えられる体を与えられる』」
ξ゚⊿゚)ξ「私は『サイコ』だから、普通に風邪だってひくけどね」
(´・ω・`)「……」
ξ゚⊿゚)ξ「信じてくれるかしら?」
ξ゚⊿゚)ξ「むかし、この暁廟町の人達はね、私達の御先祖様はね」
ξ゚⊿゚)ξ「呪術師だったのよ」
.
68:名無しさん:2023/10/08(日) 20:25:13 ID:lrpTdIvI0
(´・ω・`)「呪術師……」
ξ゚⊿゚)ξ「家ごとにいろんな呪いの方法があるの。
もちろん、いまではもうやってるところはないわ。そのはずよ」
ξ゚⊿゚)ξ「けれども、一度始めてしまったものを、
なかったことには出来なかったみたい」
ξ゚⊿゚)ξ「この町では御先祖様の始めた呪いを、
末裔の私達が継承して食い止めてるの」
(´・ω・`)「……」
ξ゚⊿゚)ξ「暁廟町には呪いが存在する」
ξ゚⊿゚)ξ「馬鹿げてるでしょう?御伽噺みたいでしょう?
きっとこの事件はね、
推理とか法律とかでどうこう出来るものじゃないの」
ξ゚⊿゚)ξ「だってブーンくんたちは、『被害者』のみんなは、
ガキノモリのカミサマに呪われてしまったんだもの!」
ξ゚⊿゚)ξ「ほんとはね、自分の呪いを他の人に教えるのってよくないの。
危ないから教えなくてはいけないこともあるけど、ぜんぶはダメ。
呪いを使って悪いことをしようとする人がいるからよ」
ξ゚⊿゚)ξ「アンタには特別に教えてあげたんだから。他の人には言わないでよね?」
(´・ω・`)「どうして教えてくれたの?」
ξ゚⊿゚)ξ「ブーンくんの友達だからよ。
あの子と友達になる人なんて、暁廟町にはいなかったもの」
(´・ω・`)「……」
(´・ω・`)「……僕の」
(´・ω・`)「諸本家の神棚にはおっきな狗の頭蓋骨が置いてあるんです」
(´・ω・`)「諸本の人達は生まれたときに、
ひとりひとつ狼の頭蓋骨を貰うんです」
.
69:名無しさん:2023/10/08(日) 20:25:38 ID:lrpTdIvI0
カタンッ
(´・ω・`)「僕がハーネスに括りつけて、いつも持ち歩いているこの子です」
ξ゚⊿゚)ξ「『狗神』ね?」
(´・ω・`)「そう、みたいですね」
(´・ω・`)「自分の分の骨に名前をつけさせられたり、
話しかけさせられたり、撫でさせられたりしました」
(´・ω・`)「諸本家の制約は『狼の骨をいつも持ち歩くこと』、です。
祝福は『自分や他人の関係性の糸が見える』……だと思う」
ξ゚⊿゚)ξ「そうだったのね。私を信じて話してくれてありがとう、諸本くん」
(*´・ω・`)「えへへ……」
(*´・ω・`)(僕だけじゃなかったんだ……)
(*´・ω・`)(暁廟町の人は、みんな僕とおんなじだったんだ……!)
ξ゚⊿゚)ξ「ガキノモリ事件のお話しをしましょう。
見て転校生くん、これがあの時代の新聞よ」
(´・ω・`)「なになに、『桟橋落下!夫婦死亡』『一家心中?生き残り姉妹』
『研究所爆発三名死亡』『暴走車追突事故』……?」
ξ゚⊿゚)ξ「そっちじゃないわ、こっちよこっち!」
(´・ω・`)「『我奇ノ杜集団児童誘拐監禁事件』
『我奇ノ杜 児童集団 カミカクシ』……」
ξ゚⊿゚)ξ「我奇ノ杜事件(わたくしのもりじけん)、通称ガキノモリ事件」
(´・ω・`)(『ガキノモリ事件は終わっていない』……)
ξ゚⊿゚)ξ「暁廟町に『我奇ノ杜(わたくしのもり)』
という場所があるのを知ってるかしら?」
(´・ω・`)「ううん……」
.
70:名無しさん:2023/10/08(日) 20:26:03 ID:lrpTdIvI0
ξ゚⊿゚)ξ「暁廟町の真ん中にはね、とっても大きな森があるの。
森の奥には御社があって、カミサマを祀ってるのよ」
ξ゚⊿゚)ξ「ガキノモリのカミサマにはね、
絶対にお願い事をしてはいけないのよ。絶対にね』
(´・ω・`)「ええと、あっ!立入禁止になってるところ?」
ξ゚⊿゚)ξ「実はね、立入禁止にはなってないの。
大人らが勝手に入らないようにしてるだけ」
ξ゚⊿゚)ξ「その御社に小学生五人が閉じ込められていたの。
そして、中には犯人も一緒にいた」
(´・ω・`)「犯人も一緒に……」
ξ゚⊿゚)ξ「おっかないわよね」
ξ゚⊿゚)ξ「犯人と子供達はガキノモリの御社に数日間いたわ。
そのときになにがあったのかは分からない」
ξ゚⊿゚)ξ「閉じ込められてから七日後、
ガキノモリに来た『第一発見者』は気付いたの」
ξ゚⊿゚)ξ「いつもなら鍵がかかってる御社の扉が開いてることに」
ξ゚⊿゚)ξ「そこで弱りきった子供達を見つけて、
そのあと来た『第二発見者』が警察に通報したわ。
子供達五人は生きて帰って来た」
ξ゚⊿゚)ξ「犯人が何日目に御社から逃げたのかは分からない。
どうして、子供達を閉じ込めたのかも分からない」
ξ゚⊿゚)ξ「子供達は心に傷のせいか、はたまた犯人を守っているのか、
事件についてなんにも覚えてなかった」
(´・ω・`)(『どうかこのまま、あの人を探さないであげてください』)
(´・ω・`)(どうして、犯人を探さないでください、なんだろう?)
(´・ω・`)(もしも僕が被害者だったら、絶対に犯人を捕まえて欲しいと思うのに)
ξ゚⊿゚)ξ「これでガキノモリ事件の情報は全部よ」
.
71:名無しさん:2023/10/08(日) 20:26:37 ID:lrpTdIvI0
ξ゚⊿゚)ξ「分かってるのは……場所は『ガキノモリの御社』、
被害者は『小学生五人』、時期は『十三月の真冬』、
監禁日数は『七日間?』、犯人は『逃亡』ってことね」
(´・ω・`)「『現在も犯人の特定や逮捕には至っておらず、また、
被害者らが犯人の逮捕を望んでいないため、未解決事件となっている』」
(´・ω・`)「うーん?」
ξ゚⊿゚)ξ「つまり犯人が見つからないまま、ってことね」
(´・ω・`)「暁廟町では被害者が望んでないと犯人を探さないんですか?」
ξ゚⊿゚)ξ「当たり前でしょ?」
(´・ω・`)「はえぇ、外の世界とはちょっと違うみたい」
ξ゚⊿゚)ξ「私は思うのよ。みんなは犯人に呪いをかけられたんじゃないかしら?」
(´・ω・`)「呪い……」
ξ゚⊿゚)ξ「だからみんな、ガキノモリ事件を思い出せないのよ」
(´・ω・`)「あのう、ちょっと気になってることがあるんですけど」
ξ゚⊿゚)ξ「なに?」
(´・ω・`)「生徒会長ちゃんは『被害者』じゃないんですよね?」
ξ゚⊿゚)ξ「そうよ。初等部のとき暁廟町に
引っ越してきたから、みんなと知り合いではあるけど」
(´・ω・`)「『関係者』ではあるんですよね?」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ」
.
72:名無しさん:2023/10/08(日) 20:27:05 ID:lrpTdIvI0
「暁廟町の有名人のブロマイドはいらんかねー」
「『あの優等生くん』、『あの問題児ちゃん』、『あのアイドルくん』、
『あの引きこもりくん』、『あの影くん』、『あの生徒会長ちゃん』」
「どの『被害者』が出るかは開けてからのお楽しみだよー」
「全種類揃えると我奇ノ杜のカミサマの御利益があるよー」
ξ゚⊿゚)ξ「私はガキノモリ事件の『第一発見者』よ」
.
73:名無しさん:2023/10/08(日) 20:29:33 ID:lrpTdIvI0
ξ ⊿ )ξ「告白します」
ξ ⊿ )ξ「私はあの事件の第一発見者です」
ξ ⊿ )ξ「あの日もこんな風に、真っ赤な夕暮れどきでした」
ξ ⊿ )ξ「七日前から熱を出していた私は、ぼうっとしたまま、
裸足のまま、気が付いたらガキノモリの御社に向かっていました」
ξ ⊿ )ξ「どうしてそうしたのかは覚えていません」
ξ ⊿ )ξ「そして、御社の中でみんなを見つけました」
ξ ⊿ )ξ「お空が真っ赤でした。お部屋が真っ赤でした。
みんなが真っ赤でした」
ξ ⊿ )ξ「みんな、血まみれでした。両腕が傷だらけでした。
鏡の破片があっちこっちに散らばっていて、
きらきらと、きらきらと、光っていました」
ξ ⊿ )ξ「みんな、抱き合うように眠っていました。
私は泣きました。みんなが死んでしまうと思いました。
気が付いたら私も、眠りに落ちてました」
ξ ⊿ )ξ「私が覚えてるのはそれだけです」
.
776:名無しさん:2023/11/03(金) 19:20:05 ID:P55NlXfc0
(´・ω・`)「生徒会長ちゃんが第一発見者!?」
ξ゚⊿゚)ξ 「私もね、事件の前と後のこと、ほとんど覚えてないの。
熱があったせいだ、ってお医者様は言ってたわ」
(´・ω・`)「それは……怖かったですね」
(;´・ω・`)「あっ、頭大丈夫ですか!?」
ξ゚⊿゚)ξ「私なら大丈夫。頭が痛くなったことはないわよ」
(´・ω・`)「なんだって犯人は、内藤くん達の腕を切っていったんだろう?
やっぱりなんかの呪いのひとつなのかな?」
ξ゚⊿゚)ξ「大人達もはじめは『子供達が呪術の生贄にされた』と思ったみたい。
被害者全員が大切なものを奪られて帰ってきたから」
(´・ω・`)「大切なものって?」
ξ゚⊿゚)ξ「分からないわ、私は『被害者』じゃないもの。
ブーンくん達も教えてくれないのよ」
(´・ω・`)「そっかぁ……」
ξ゚⊿゚)ξ「私からも諸本くんに聞きたいことがあるの」
ξ゚⊿゚)ξ「ねぇ、私達三人も糸でつながってる?」
(´・ω・`)「あっ……」
(´・ω・`)(僕達の間には……)
(´・ω・`)(糸なんて……)
(´・ω・`)「……ふふ。もちろんいつも見えますよ、僕達三人の間に糸が!」
ξ゚⊿゚)ξ「ふふっ、やっぱりね!」
(;´・ω・`)「ううっ。あっ、そういえばおかしいんですよ!
『被害者』のみんなは白いリボンでつながってるんです!」
ξ゚⊿゚)ξ「かわいくていいじゃない?」
.
75:名無しさん:2023/10/08(日) 20:30:25 ID:lrpTdIvI0
(´・ω・`)「初めて見るんです、リボンでつながってるなんて。
おまけにあの結び方!小指から腕までがんじがらめだった」
ξ゚⊿゚)ξ「それってどういう意味があるの?」
(´・ω・`)「うーん、なんらかの強い絆で結ばれてる……?」
(´・ω・`)(ここにいるのが僕じゃなくて兄さんだったら
もっと詳しく見えてたのかな……)
ξ゚⊿゚)ξ「おんなじ事件の『被害者』だからかしら?」
キ-ンコーン
カーンコーン
(´・ω・`)「あっ」
(´・ω・`)「下校の時刻だ。すっかり空が真っ赤ですね」
ξ゚⊿゚)ξ「十三月は夕暮れがいっちばん長いのよ」
ξ゚⊿゚)ξ「校舎が閉まる時間だわ。
はやく出ましょ、閉じ込められちゃう」
ξ゚⊿゚)ξ「この学校も呪われてるのよ」
(´・ω・`)「待って、もうひとつだけいいですか?」
(´・ω・`)「通報した『第二発見者』って誰ですか?」
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ「『王子様』よ」
.
76:名無しさん:2023/10/08(日) 20:30:47 ID:lrpTdIvI0
──下校
(´・ω・`)「すっかり遅くなっちゃった。六時になる前におうちに帰らなくっちゃ」
(´・ω・`)「えっとぉ、『暁廟町を歩くなら地図は絶対!』だったよね」
(´・ω・`)「夜にこっちの道は通っちゃダメだから、あっちの道を通って角を曲がって……」
シャランッ
(´・ω・`)(鈴の音……?)
ボヤ...
(´・ω・`)(あれはなんだろう?遠くにぼんやりとした灯りが、いくつも並んで見える)
(´・ω・`)(たくさんの人が松明を持って一列に歩いてるみたい。
でもあの道って、いまの時間は通っちゃダメだったよね?)
(´・ω・`)(誰かが迷い込んじゃったのかなぁ?)
|ω・`) ソロリ...
シャランッ
「おめでとうございます、おめでとうございます」
「おめでとうございます、おめでとうございます」
シャランッ
lw´ _ ノv「おめでとうございます、おめでとうございます」
川 々 )「おめでとうございます、おめでとうございます」
シャランッ
|ω・`)(なに、あれ……)
.
77:名無しさん:2023/10/08(日) 20:31:08 ID:lrpTdIvI0
川 々 )
川 々 )
( 々 川 グルンッ
シャランッ
(;´・ω・`)「!!」バッ
(;´・ω・`) ドクンッ ドクンッ
(;´・ω・`)(危ない危ない、見つかるところだった……)
シャランッ
( 々 川「……」
lw´ _ ノv「どうかした?」
川 々 )「……なんでもないのです」
シャランッ
(;´・ω・`) ドクンッ ドクンッ
(;´・ω・`)(あれって見ちゃダメなやつだよね?)
(;´・ω・`)(真っ黒なローブを着た、松明を持った人達が歩いてた)
(;´・ω・`)(みんなフードを被って俯いてたから、顔は見えなかったけど……、
大きい人も小さい人もいた気がする)
(;´・ω・`)(それから、それから……おっきな人形が運ばれてた)
(;´・ω・`)(列の真ん中で、ガイコツみたいに痩せ細った人をした人形が、
たくさんの人の手に持ち上げられてた)
.
78:名無しさん:2023/10/08(日) 20:31:37 ID:lrpTdIvI0
(;´・ω・`)(あれも誰かのおうちの呪いなのかな?)
(;´・ω・`)「はやく帰ろう。ええと、地図地図……」