ブーン系
食と旅の秋祭り
29
ξ゚⊿゚)ξ 幽世の森に棲まうようです
50:名無しさん:2023/10/10(火) 12:42:37 ID:rMomP2Sg0
終幕 □ 夢のあと
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51:名無しさん:2023/10/10(火) 12:45:40 ID:rMomP2Sg0
「おきて」
「……まだ眠いの」
「ツン、ほら、朝だよ」
「それに、こわいの、目を覚ますのが」
「……大丈夫。怖いのは、彼がすべて引き受けてくれたから」
「彼?」
「なんでもないさ。ほら、朝ごはんにしよう」
.
52:名無しさん:2023/10/10(火) 12:47:10 ID:rMomP2Sg0
ξ-⊿゚)ξ「……う」
ぐ、と伸びをする。
ベッドから降りると不思議な心地がした。
何日もずっと眠っていたような、ものすごく久しぶりに起きたかのような。
長い、長い夢をみていたような、そういう感覚。
ξ゚⊿゚)ξ「くるうさん?」
返事はない。階下にいるのだろう。
たぶん、夢の中に迎えに来てくれたのだ。
……なんとなく、寂しい気がする。
ξ゚⊿゚)ξ(なんでだろう)
香ばしく焼けたパンの香りを辿るようにぱたぱた降りると、既に朝餉の用意を終えたくるうさんが座っていた。
川 ゚ 々゚)「お寝坊さんだね」
ξ*゚⊿゚)ξ「えへへ。おはよう、くるうさんっ」
川 ゚ 々゚)「はい、おはよう」
そう言うと、くるうさんはテーブルに着いた私に近付く。
するりと腹を撫でた。
川 ゚ 々゚)「調子はどう?」
意味を理解しあぐねて、きょとんと首を傾げる。
ξ゚⊿゚)ξ「おなかならペコペコよ」
そう返すと、くすりと笑って席に戻った。
川 ゚ 々゚)「それならよかった」
ξ-⊿゚)ξ「今朝のくるうさんは心配症ね」
川 ゚ 々゚)「……家族、だからね」
家族? 聞きなれない言葉だった。
なにだか、ぽっかりと空いた胸の中に落ちてくる。
川 ゚ 々゚)「ほら、お食べ」
ξ゚⊿゚)ξ「はぁい」
53:名無しさん:2023/10/10(火) 12:49:04 ID:rMomP2Sg0
差し出されたものをよく見ずに口に頬張る。
ξ;゚⊿゚)ξ「!!?」
くにゃりと柔らかな食感。
反射的にゲホゲホと咳き込んだ。
ξ;-"⊿-)ξ「う、う゛ぅ゛~~~~~~」
涙目になりながら何度もむせ込む。
なんだこれ、なんだろう、受け付けない。
こんな感覚は初めてだった。
川 ゚ 々゚)「どうしたの」
不思議そうにくるうさんがみている。
皿には、魚の切り身が並んでいた。
ξ; ⊿ )ξ「わたくし、それ、嫌ぁ……」
川 ゚ 々゚)「おや。そうかい、ごめんね」
川 ゚ 々゚)「……今までも魚は苦手だったかな」
差し出された水をこくこくと飲みながら、首を横に振る。
お魚。大好きだったはずだ。
そもそも私(わたくし)の好物だったはず。
ねえ。とわたくしの裡(うち)に語りかける。
私(わたくし)はおろおろと困ったようにして、やがて、ゆっくりと首を横に振った。
ξ; ⊿ )ξ「そうじゃないけど、そうみたい……」
とにかくこのヌメっとした感じがダメなのだ。
どうしても、苦手で……。
ξ;⊿;)ξ「あれ」
ぽろぽろと涙がこぼれる。
なぜかわからないけれど、止まらない。止められない。
ξ;⊿;)ξ「わたくし、どうして」
くるうさんは立ち上がり、ひょいとわたくしのことを抱え上げる。
されるがままにしていれば、そのまま優しく背中を撫でてくれた。
川 ゚ 々゚)「……魚はきっと、彼が苦手なんだね」
くるうさんの言葉はよく分からなかったけれど、泣き止むまで、落ち着くまで、くるうさんはずっとやさしく背中を撫でてくれた。
54:名無しさん:2023/10/10(火) 12:52:16 ID:rMomP2Sg0
きっと、これから先。
わたくしはずうっと、魚のことは苦手なまんまだろう。
なんとなくそう思って、同時に、そうでありたいとどこかで思っていた。
ゆるゆると目を閉じる。
まぶたの裏、凪いだ水面のような暗やみのなか、やわらかな猫のぬいぐるみがそっと傍らに寄り添うような気がした。
ξ゚⊿゚)ξ 幽世の森に棲まうようです おわり
◆支援絵